2017年12月27日

年仕舞い



2017年の野郎も、もうあと数日の命だぜ。
年の瀬も押し迫り、椅子の張り替えが続いています。
次はハイバックチェアですが、椅子の中から1973 NY のメモが出てきました。
木部の見事な細工、経年の風格。立派なヴィンテージチェアです。

そういえばもう時効ですが、昔、自分も張り替えるソファーの中に日付と
当時所属していた会社名を書いたりした事があります。
あのソファーもそろそろ張り替えの時期。今ごろどうしてんだろ。
そんな事も考えます。


今年は12月28日まで営業いたします。新年は1月6日より営業いたします。
皆様、今年一年もありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えください。




2017年12月2日

張り上がり



J.L. Møllerのチーク椅子が張り上がりました。
不幸にもお客さまの自宅でボヤ騒ぎが起き、無惨な姿になった椅子でした。

木部は水をかぶった跡が残り、煙と煤の臭いが染み込んだ上、
クッションには踏み込んだ消防隊の足跡がくっきり。
火事現場の壮絶な様子が生々しく刻み込まれていました。

部屋内全面修繕のついでに椅子の処分も考えられたそうですが、
海外赴任から戻った時に購入した思い入れの強い椅子とのことで
張替え・修繕をご注文いただきました。

修理はクッションベースもすべてやり直し、木部は全面研磨後、オイルで再塗装。
張替え前は淡い格子柄の裂地でしたが、お客さまの選んだ鮮やかな青色へ張替え。

少し前までは木部の色と裂地を調和させ、椅子をあまり目立たせない注文が
多かったのですが、最近は 今回のような木部と布色の大胆なコントラストを
楽しむ注文も増えて来た気がします。

この椅子も、また再び可愛がってもらえる事でしょう。




2017年11月25日

張り替え



デンマーク、J.L. Møllerのダイニングチェア木部補修・座面張り替え。
椅子本体やクッションの納まりに、合理的に質の高い物を作ろうという考えが
一貫されているのが判り、感心させられました。

日本の椅子とほんの少し、でも確実に異なる指向。国民性の違いかなあ。




2017年11月11日

たまにゃァ



クラシックな椅子の張り替え。
いつもは予算の都合で出来ねェ事が多いけど、こんな昔の仕事が
消えていくのは惜しいやね。
ま、たまにゃァ採算度外視で・・ね。もちろん持ち出しはナシだよ。




2017年11月9日

本棚と食器棚と。棚、棚、棚



これもまた一本の電話から始まった。

「もしもしT木です」
「あ、お久しぶりです!」

以前はよくご夫婦と顔を合わせていたが、知らず知らずのうちに
少し疎遠になっていたT木さん。
久しぶりの電話でお話を聞くと、この度、横浜青葉区のあざみ野に
ヒーリングサロンを開業するという。
そこでそのサロンに置く家具・収納・看板一式を注文したい、というお話。

「ありがとうございます。でもどうしてウチに?」
「何言ってんですか。以前からいつか寺本さんに家具を
お願いしたいと思っていたんですよ」

嬉しさと感謝の気持ちを1:1で混ぜ、わずかなプレッシャーを加えた
大人の味に、自分の脳みそが汗をかくのを感じました。


  

相談の結果、サロンの看板と表札、本棚、食器棚、スツール2脚を
製作することになりました。
一番先に思ったことは、サロンの雰囲気から、甘すぎない柔らかさを最優先で
家具を製作すること。
材料はすべてチェリーの無垢材。一度に納品するのではなく、時間をかけて
順番に製作・納品させてもらうことになりました。



食器棚は華奢になりすぎないシャープな線と、中の食器が綺麗に見え
デザインを意識。
1m × 1m × 35cm の使いやすい大きさ。


本棚はL型に。
横一列に並べてのレイアウト変更にも対応できるようにしてあります。
木端面にわずかなRをつけ、表情を柔らかくしてあります。



無垢の置き家具としては大きめのヴォリュームになった一連のお仕事。
お客さまにも部屋の中に統一感が出て気に入っていただいた様で
安心しました。



「心とからだの調整室 urara tuning」
神奈川県横浜市青葉区あざみ野2-33-19
070-5024-7147
https://www.urara8tuning.com/





2017年11月4日

初志貫徹・・・執念?



仏師の友人のアトリエに顔を出しました。
彼とは、会うといつも木材や刃物、道具の話で話題が尽きません。

鑿、鉋、定規、カメラ、レンズ・・・。
尽きぬ話の中で一度、なぜ仏さんを彫る仕事に就いたのか聞いたことがあります。

「自分は小学生の頃から仏師になりたかった」

その細かい動機まではお聞きしませんでしたが、
非常に印象に残る一言でした。
お医者さんでもスポーツ選手でもなく、仏師という特殊な仕事に
夢を抱き、小学生からの目標を達成する。
面白い人だな、と思うと同時に、自分の小学生の頃の夢ってなんだっけ?と
それを思い出すことさえできない我が身を考えました。

今、彼はある大きな寺院のために巨大な龍を4体、1年がかりで
彫り続けています。
生来の持続力できっと素晴らしい彫刻を彫り上げると思います。




2017年9月25日

ま〜、まずはビールでも



金沢で用事の合間に入ったお座敷。
大正時代に建てられ、現役で使われているお土産屋さんの建物2階。

当地独特の赤い色壁と、繊細な作りの建具。
そして1フロアぶち抜きの大座敷を抜けてゆく風。

昼下がりのゆるゆるした空気と共に、あ〜、気持ちいいってこういう場所だよな、
と思わず独りごち。

控えめで品があって心地よい。なんだか示唆に富んだ所です。




2017年8月28日

夏のきもち



東久留米・自由学園内の木工室で一日作業。
開口からの残り日が少しうらめしい。




2017年8月22日

ヨット



ご縁があり、ヨットハーバーで打ち合わせと宿泊。
ぼんやりと海鳥を見たり、陸に上ったヨットを眺めたり。

ヨットの美しさ・船内家具の優美さや機能性に目を惹かれ
時間は過ぎていきました。




2017年8月2日

格子戸収納



リビング用のオーディオ収納、TV台、整理収納を製作しました。
材料はナラ突き板合板と無垢材のハイブリッド。

左からそれぞれ間口1,1m・1,5m・1,1mのヴォリュームですが
背板と壁の間にスペースを取り、それぞれの側板にスリットを設け、
オーディオの配線が3台の裏面を自由に動き回れるように設計しました。

収納の引き違い戸は、最初から縦スリットにしようと思いましたが、
あまり日本的なものにならないように、と考えていました。

しかし様々な縦格子を見ているうちに、やはり宿場町の縦格子の美しさを
再認識。


強度を考え入れた、横桟の高さをTV台の高さに合わせ、
3台の家具全体の水平ラインを揃え、すっきりとした印象を出しました。

置き家具と造作家具両方の要素を持った面白い案件。
いろいろと勉強になりました。




2017年7月12日

昔のもの



少し前、ジャガーEタイプのシート張り替え検討のお話をいただきました。
こういうものは本来『車の内張り屋さん』と呼ばれる専門職が存在しますが
「本革を扱えるのならば・・・」と、近所の車屋さんから相談を受けました。

最終的には車のオーナーの判断で、張り替えをせずに当時のままの姿で
使用する事になりましたが、自動車のシート張り替え、
ましてやジャガーのシート張り替えとは面白い話があるものです。

一度座らせてもらいましたが、背中のR、腰のサポート、クッションの
座り心地、張り地の革の仕立ての良さ、そして全体の形の美しさ。
すべて良好でよく考えられていました。家具とはまた違う機能美です。

当時のデザイナーやエンジニア、メーカーの気概を感じ取れるものでした。





2017年6月9日

お題



梅雨入り直前に湘南江ノ島へ打ち合わせに出かけた。
普段自分たちの使う駅から、電車で1時間足らずで、もうそこは別の国のようだ。
降り注ぐ太陽、海の近くゆえの開放感、歩いている人の人情まで違ってみえる。

こういう、普段と異なる場所に来ての楽しみのひとつにその土地その土地の
古い民家を見ることがある。
土地の気候風土に即した、理にかなった建物。日差しの強い場所には庇を深く、
湿気の強い場所には敷地や土台に工夫を凝らし・・・。
それぞれの個性を持った民家だが、そういえばこういう建物はだいたい築50年
以上のものばかりだ。60年代を境に住宅の様相が変わった気がする。

50年前の事を考えると、その頃あった大きな出来事といえば東京オリンピックだ。
やはり家具(とくに椅子張り)の世界もオリンピックを挟んで大きく
変わったらしい。
椅子張りの親方がよく言っていたことを思い出す。
「やっぱり(東京)オリンピックを境に材料が変わったね。ウレタンが
出てきたんだよ。
ウレタンが出てきたらそれまでの藁やバネなんか全然使わなくなっちゃった。
そっちのが全然手ェ早いんだもん。入ってすぐのヤツでもすぐに下ごしらえ
出来ちゃうし」

今、世間はそういう事への振り戻しの波と、さらにそれを突進める波の
二極化が進んでいる。ローカリズムとグローバリズムの対比だ。

2020年にはまた東京でオリンピックが開かれる。
そのとき世の中はどうなっているのだろう。




2017年6月7日

穴空け



ケヤキのカウンターに穴を空けている。
集塵はしているが、狭い作業場の中はケヤキの匂いと削りくずに包まれた。

出来上がりを見ると何てことのない作業にみえるが、ルーターの騒音と埃、振動。
気を抜くと一瞬で失敗する作業なので、集中した身体の消耗も激しい。

もっと効率の良い集塵、加工方法は無いかな・・・、いつもそんな事を考えながら
作業は続く。




2017年5月17日

クルミテーブル



クルミのダイニングテーブルを製作しました。
寸法は1700w × 700d 高さは脚を差し替える事で、低めのテーブル600h と、
ローテーブル320h の二通りで使用することができます。

耳付きの板材を使うので、ジョージナカシマや民芸調の形にならないように
脚のデザインには気をつかいました。
また、差し替えができる=強度に気を使わなければいけない。という点から
長手の振れを抑えることに腐心しましたが、問題なく強度を出すことができました。


ローテーブルバージョン 

今回は、2年前にクルミの桟積みをお願いしたお家のために製作しましたが
庭先で乾かしていた板材が、こんな形でテーブルになる様子を喜んで
もらえたようです。
一本の丸太から製作したため、天板はブックマッチ、脚もすべて同じ木から
製作(共木)できたのも貴重な体験でした。




2017年5月16日

コンプレッサー



最近、ふとしたご縁からいただいたコンプレッサー。
えらく貫禄があるなア、と製造年月日を見ると
「S.59/3」。

木工機械に始まり、業務用の機械は30年間当たり前のように動き続け
られるものが多い。工房の機械も中古で揃え、おそらく20年、30年
選手ばかりだろう。
その機械たちもベテラン揃いなのに、全く問題なく使うことができる。

そしていま、頑丈な製品を作っていた国内の新型機械メーカーの
ほとんどは廃業・転業している。

いいものを作ることで自社の売り上げを細めることになる。
産業構造の変化なども絡むとはいえ、皮肉な問題だ。

男前のコンプレッサーは何を想う。




2017年4月27日

新緑 



根を詰めた仕事の合間を見て、近郊の日帰り温泉へ骨休め。
築100年は経とうかというお宿の建物、昼でもしっとりと薄暗い
休憩場所に座り、建物の見事な普請や欄間細工を見ていると
窓の外には萌えるような緑がひろがっている。

薄暗い室内から見る新緑は一幅の絵画のよう。


ゆっくり静かに流れていく時間。

身体の強張りも抜けていきます。





2017年4月15日

イレギュラー



機械でオニグルミの丸太材を削っていたら、「カリッ」と音が鳴り、銀色に輝く
ものが見えました。

「なんだろう?」

よく見てみると、散弾銃の弾だ。
おそらく狩猟中の流れ弾だろう。

このクルミは確か岩手で伐採されたもの。

何を獲ろうとしていたのだろう。鳥かな?鹿かな?兎かな?

散弾だから、食用目的ではないだろう。

害獣駆除かな・・・。

狩りの素人なりにいろいろ考え、一時、岩手の山中にいるような気分になりました。

こんな予想外のことも起こるので、自然のものは面白い。



2017年4月7日

3度目の春



毎春恒例になりつつある丸太の製材に、南会津へ出かけました。
今年はクルミと楢の製材。昨年盛岡で仕入れた材料の製材です。

帯鋸の轟音、挽かれていく材木のけたたましい音。

こちらの指示通りに製材機を動かすハンドルマン。
いつも通りの見事な手際を横目で見ながら、緊張して一鋸目を見守ります。


残雪の景色の中、あっという間に過ぎ去っていく濃密な時間。

春爛漫の横浜の工房へ戻ると、旅の疲れと南会津との季節の
流れの違いからか時差ボケにかかったようにぼんやりします。

浦島太郎とは斯様の如くか・・・。





2017年4月3日

チークサイドボード



チークのサイドボードを製作しました。
以前ベビーサークルをご注文いただいたお客さま、次は北欧ヴィンテージの
サイドボードをお探しでしたが
・既製品ではなかなか希望寸法のものがない。
・その希望寸法のものでも収納の数が思い通りのものがない。
・手掛けの大きさのバランスが良くない。
ということで、オーダーメイドで製作。

何度かの図面のやりとりで細かい仕様を決定。

ヴィンテージっぽさを出すために、特注のブックマッチ・チーク化粧合板を
収納前面に使用、引き戸レールなどの金物は使わないことにしました。





扉や引き出しのつまみはよく作りますが、掘り込みの手掛けを製作するのは

初めての経験。
角度や深さなど試作を繰り返しましたが、端正で納まりの良いものを作り出すことが出来ました。




2017年3月26日

保育園サークル



3,7m × 2,9mと4,2 × 1mの大きさの保育園サークル2台の製作・
現場取付を行いました。
高さは750mm。既存のサークルでは高さが低かったため、入れ替えでの
木工事だったようです。
工房の作業スペースの大きさや作業効率を考えて分割や構造を工夫しましたが
十分な強度を出すことができました。



作業をしていると子供たちが興味津々。

恐る恐る横目でこちらの案配をうかがっているご様子。
楽しい園生活を送ってね。
お邪魔しました。



2017年3月17日

星霜矢の如し



ふとしたご縁で訪れた、和歌山県の串本町。時間が止まったような集落の民家。
古びた甍と曇り空の対比がはっとするほど美しい。

2月・3月と瞬間的に飛び去っていった気がします。

いろいろありますが、それもまた。




2017年1月29日

だるま市



毎冬、工場近くの麻生不動院で開催されるだるま市。
人波をかき分けて到着した境内でのシュールな一コマ。
願いが叶ったり叶わなかったり。それぞれの表情の裏側にある
物語を想像したりして。




2017年1月23日

ベッドサイド収納



収納家具を製作しました。
ベッド脇で特定のものを収納して使用するという事で棚の細かい寸法を
割り振り指定で製作。
さらに身体の不自由なお客さまのために上部に手すりをつけて欲しい。という
依頼でした。

少しでも毎日の暮らしの手助けになれば、と思い製作した手すり。

すっきりと美しく、視認しやすい見た目と使いやすさ、強度・加工方法から
導かれたデザインですが、その使い心地をお聞きするのはもう少し先に
なりそうです。
使用したお客さまが気に入ってくれるよう願っています。







2017年1月7日

その後へ



正月帰省を兼ねて、以前納品した家具を拝見しました。
納品の時はまだ引っ越し直後で、ガランとした冷たい印象の室内だったが
2年の間に生活が根ざし、家中が温かい雰囲気に満ちていた。

そこで見た家具も、使い込まれた表情が出て幸せな雰囲気に包まれていた。
いかにも生活を楽しんでいる様子のご家族。
この家具たちも幸せに違いない。






さあ、遠慮せずに