2014年4月21日

小椅子張り直し


スツールをご注文いただいた、横浜保土ヶ谷区のTさま、
小椅子張り直しの注文もいただきました。
座面、もう落ち込んじゃってますね。

30年以上前に神戸で誂えた、というこの椅子。鏡台とセットでお使いになり
随分お気に入りでしたが、現状座る事ができず、気になっていた、との事。

早速中身を開けてみました。


・・・なるほど、もうベースのテープが切れて、ウレタンも粉状に劣化が始まっていました。
まずは全てを剥がし、ウェービングテープを引きます。


そしてウレタンを交換、下地つくりです。

椅子張りの親方の下で働いていた時、よく「下ごしらえで椅子張りは決まんだッ!ごまかせねえからしっかりやれよ」
などと叱られていたことを思い出しました。

生粋の神田っ子でさっぱりしているが気が短く、よくもまあ、何年間もあそこまで叱り続けてくれたものだ、と思います。
しかし意地が悪くなく、こちらとしっかり向き合ってもらっているのが判るので素直に聞くことができました。
また、非常に人情の機微にとんだ怒り方で、根に残ることもありませんでした。
いま思うとひたすら感謝感謝です。(すこし頑固でしたが)

近々遊びに行きますね、親方。


布地は痛みも少なく、剥がしたものをそのまま使ってほしい、という事で
今回は「張替え」ではなく、「張り直し」をしました。

布剥がしの時、傷をつけないように気をつかいながら作業をし、張り込みです。
復活!!

この張り直しも非常に喜んでいただきました。
お気に入りの家具がまた使えるようになるのは、確かにうれしいものです。

Tさま、ありがとうございました!







2014年4月14日

木のハイツール

木のハイスツール


定番商品の丸スツールの仕様違いとして、ハイスツールを製作しました。
材料はチェリー。座高600mm、結構高めです。

お客さまは横浜保土ヶ谷区のTさま。
「台所で使えるような座高の高いスツールが欲しい」と、ショウルームにいらっしゃいました。
そこに置いてあったスツールをご覧になり、座高・座径・使用する材種をアッと云う間に
決められました。


このスツール、普通のスツールの脚を延ばせば済みそうですが、強度を考えると、脚部の下部に「つなぎ」という部材が必要になってきます。
スツールそのものの構造を変えてみたりいろいろ試していたのですが、なかなか形が決まらない。

ある時、作業場の電動工具の刃物を見ながらボンヤリしていたら、頭の中につなぎのいいアイデアが浮かび、試作を重ねるうちに某高級車の内装部品が頭に浮かびました。


(もちろん写真でしか見たことがありませんが)なんとなくプロペラを連想するその形が、全体が丸いシルエットのこのスツールに少しシャープな印象を与えてくれる気がしました。



いままで製作したことのない形なのでうまくいくかは判りませんでしたが、うまく完成しました。

納品したお客さまにも喜んでいただいたのですが、今回のように形に悩んでいる時、
意外なところからアイデアが湧くものです。

実は桟の断面が曲面になっています。苦労したんですよ。

        






2014年4月1日

鋏を買う


先日、種子島の鍛冶屋さんの鋏を買いました。
ひげさんのお店。


ふと、ある本の記事で目にして一目惚れ。

さっそく、種子島のひげさんのお店に電話で問い合わせてみたところ、
(おそらく)年老いた女将さんが対応してくれました。

お話によると、この鍛冶屋さんは鎌倉時代以前より続く37代目の鍛冶屋さん。
当主の牧瀬さんは現在も鍛冶をしておられるが、男子がおらず、「牧瀬」の名は当代限り、というお話でした。

素朴ながら、熱を帯びた女将さんの語り口に引き込まれ、その場で種子鋏(たねばさみ)を注文したのですが、届いた品物をみて、さらに感激しました。


包みを解くと、鋏がまるで鍛冶場から直接送られてきたかのような鉄の匂い、
端正なヤスリ目と、たがねで刻んだ「本種」の銘。


雑鋏として使える頑丈さと、素晴らしい切れ味をもったこの鋏、
1000年続いた(牧)の銘が種子鋏に刻まれるのは残念ながら、おそらくもう
あとわずかですが、その中の一丁を手に出来た嬉しさと、
素朴ながら丁寧に作られた鋏を見ながらいろんな事を考えています。

この刃のねじれが切れ味の秘密。





さあ、遠慮せずに