マグネットハンマー
家具製作といっても様々な専門職があり、それぞれに専門道具があります。
テラモトでは木工、椅子張を行っていますが、その中で椅子張に使うマグネットハンマーをご紹介します。
マグネットハンマー、名前のとおり頭が磁石になっています。
口の中に3分釘(9mm釘)や5分釘(15mm釘)を含んでおき、ピンと張った張り地を片手でおさえながら
口のなかの釘を空いた一方の手に持ったハンマーの頭にくっつけ、釘を打ち込み張り地を留めていきます。
現在は張り職でもあまり使われなくなったマグネットハンマー、慣れるまでは大変ですが
一度慣れると狙ったところに釘が打てるようになり、非常に便利です。
このハンマー、少し前までは鍛冶屋さんが張り道具の入った段ボールをバイクの荷台にくくりつけ
あちこちの工場を売り歩いていました。
職人が自分の道具や気に入ったハンマーの頭を買い、それを自分で柄にすげて使用するのです。
面白いのは手作りの証なのか、柄をすげる櫃穴やハンマー自体の形がそれぞれすこしづつ違いました。
そしてそれを各々が自分で削りだした柄にすえる・・・。
この時点で世界にひとつだけの自分用ハンマーが誕生します。
大量生産のものを機械ですえるわけではないので、ハンマーのバランス、頭の角度、
振ったとき頭の当たる場所、柄の長さ、握り。すべてがそのハンマーのみのオリジナルのものになります。
そしてその自分のハンマーで釘打ちを覚えると、他のハンマーはまったく使えなくなります。
自分用、親方A氏用、親方K氏用。 全然違うでしょ。 |
何十年というキャリアを持っていた親方に自分のハンマーを貸した時も、まったく思い通りに釘が打てず
「こんなに打てなくなるとは思わなかった」と呆れていました。
そして自分も他人のハンマーでは釘が打てなくなりました。
そうなると人間面白いもので、自分のハンマーを非常に大切に扱うよう
になります。
になります。
働き出してまだ時間の浅いころ、人から借りていたハンマーの柄がぽろりと
折れたことがあります。
折れたことがあります。
柄に寿命がきていたようですが、今思い出すとなんとも言えない気持ちに
なります。
なります。
椅子張りには他にも様々な道具があります。
木工道具ほど一般的なものではありませんし、使用する機会もどんどん
減ってきています。
減ってきています。
また機を見て紹介できれば、と思います。