2015年10月23日

毎日のこと


近ごろずっと考えている。
木で家具を作る、という事。

そもそも木という生き物の体を、切って削ってモノを作っている以上、
毎日の食卓に出て来る牛や豚や、野菜、魚・・・・
そんな食材と何も変わらないのではないか。

そんなもので家具を作るのだから、食べ物と同じで
いただきます。ありがとう。ごちそうさま。と考え
何も無駄には出来ない。と意識する。

そうして毎日手を動かし、暮らす中でふと思った。
木で家具を作る、という事。

木でないと作れない。木だから作れた。
という物を作るべきなのか、

木なのに作れた。木とは思えないものを作れた。
という物を作るべきなのか。

この2つは思考の方向が全く異なっていると思う。
そして両方とも正解だと思う。

自分はこれからどの方向へ舵をきればいいのか。
近ごろ、こんな葛藤にも似た気持ちを抱いて毎日を過ごすようになった。

過日、木とは思えない、木でないと作れないもの。と考えていて
突然頭の中に閃いた家具がある。

何日も何週間も考えて突然頭に降り注いだアイデア。
まさに頭の中で電球がはじけるような。目の前が一気に拓けるような。

その閃きがそのまま製作出来るのかは判らないが、あまりの嬉しさに興奮し、
その晩はまくし立てる様に喋り続けたことを覚えている。

ところが数日前、何となく見つけたインターネットの木工サイト
他の製作者が既にそんな家具を製作していることを知った。
自分の思いついた家具が目の前に現実にあり、そして想像通り
それはとても美しく、とても独創的な家具であった。

モノを創る。ということは難しい。










2015年10月4日

意外な仕事もあるもんだ


以前ダイニングテーブルハイバックチェアを納品した三重県のBさんより
ピザ窯型枠のご相談をいただきました。

大きさは直径600mm・高さ300mmの半球に窯口部分の鼻が付く形です。

自身が経営する築炉会社で「軽トラックの荷台に載るような大きさの」ポータブルピザ窯を開発することになり、そのための
耐熱タイル用の型を木材で製作することになりました。

築炉屋さんという、珍しい職業のBさん。
なかなか耳にすることも少ない仕事ですが、普段は陶芸窯等の製作はもちろん、産業用の高熱炉の周囲に耐火レンガで
耐熱壁を築いたりしています。
そのノウハウを生かし、さらに間口の広い仕事を創る目的で、今回のピザ窯の企画が出たようです。

お話をいただいた当初は家具屋のウチではなく、木型屋さんの仕事のように思いましたが
Bくんの熱い口調にほだされて挑戦することにしました。


製作は加工のしやすさと完成後の取り回しを考え、桐で製作しました。
桐の集成材をさらに積層してかまぼこ形に削り、さらに半球に削り出していきました。
その大きさから木工旋盤で回転させることも難しく、電気鉋で荒削り後、手道具で削ることになりました。






本体の半球削りの他に、窯口と本体の削り合わせが3次元のRになるため
苦労しましたが、型枠として問題ない納まりになりました。



それともうひとつこの仕事を難しくした要因が「型枠を使い耐熱タイルで形を作ったあと、窯口から型枠を分解して
出せるようにする」という事でした。

これも上下6分割できるようにして問題をクリアしたのですが、削り加工する前にブロックを6つ作り、
それを仮止めしてから半球を削りました。




同じ木材で製作するとはいえ、家具とはまったく異なる今回のお話。
こういうことにも手を出してみると何かの経験になり、また新しいものにつながるのかな、と
形にできた故の安堵感の中で考えています。



「藤原築炉」
三重県いなべ市藤原町石川1179
0594-46-4095







さあ、遠慮せずに