2018年12月30日

表裏一体、多段スツール


一脚で大人と子供に対応できるカウンタースツールを、という注文です。
最初は四面それぞれに、螺旋状に異なる高さのステップをつけようとしましたが
見た目の破綻と製作上の問題から、前後に異段ステップを取付けました。

下ステップは身長約170cmの大人、上ステップは身長140cm前後の子供を
想定した高さですが、前後左右と使い分けることで、様々な年齢に
対応できるスツールになりました。


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2018年12月5日

昭和は遠くになりにけり


キャリアをスタートさせた頃、よくお世話になった椅子張りの親方の
所へ手伝いに行った。
都内三田のど真ん中、ビルの谷間の細い路地。そのまた奥の「こんな所に?」
という場所に、ひっそりと木造の作業場が建っている。

15年ぶりに開ける木製の引き戸。奥から出て来る親方は、すこし老けたかな?
と思う以外は何も変わらない。その人懐っこい雰囲気と優しさから、
自分たち小僧が「三田のパパさん!」と慕っていた面影は変わらない。

御年を聞くとなんと83歳の現役の張り職人。
昔話をすると、まだ東京タワーは無かった。とか、新幹線が走り出した。
とか目眩のするような話。

親方の工場の周りも建物がどんどん無くなり、目まぐるしく変わっていく。
そんな景色の中で、ここだけはすべてがゆったり止まったような不思議な感覚だ。

腕のいいことで評判だった「芝の職人」と呼ばれた人たちの、
おそらく最後の世代の親方。
往時は威勢のいい職人衆が闊歩し、家具の街と呼ばれた新橋・芝界隈の賑わい。

いまはもう遠くなった時代。
そのわずかな残香を感じながらの一日。




2018年11月27日

ハイスツール


ナラでカウンター用ハイスツールを製作。
見た目のバランス、ステップの納まり・・・。
家具の線を少なくする。というコンセプトでの思索に時間がかかりました。

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2018年10月26日

1/5 Fantasy


プロポーション確認用の1/5モデル。これから原寸製作図の作成。
その後、実物の試作・製作へと続く。




2018年10月19日

最細2mm


1/5モデルのために旋盤でウォールナットを削る。
これだけ作るのに何本失敗したか。





2018年10月14日

円いダイニングテーブル



東京都北区のお客様に円卓を納品。
材料はウォールナット、直径1150mmと少々大きめの天板。
お手持ちのウェグナーの椅子に合わせたい。という事で
全体的に柔らかい表情を出した形で製作。

注文主の持ち物や雰囲気から、作るもののイメージが
湧き出ることは意外と多い。

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2018年10月10日

道具をつくる職人


家具屋が「特注で刃物を作る」というと、鉋や鑿ではなく、ルータービットなど
機械工具の刃物を注文することを指します。
既製品の刃物では出来ない形を削りたい場合、刃物の図面を引いて刃物屋さんに
オーダーするのですが、先日刃物をオーダーしていた仲介の木工機械屋さんから
電話が入りました。

「刃物屋さんが体調を崩して入院した。高齢でもう作れないらしい」
「・・・!」

ついにこの時が来た。と思いました。
今の時代、ネットで探せばどこかの刃物屋さんがみつかると思うのですが、
やはり馴染みのある所は、値段も安く、仕事のやり取りが容易です。
最近世間では、職人の道具を作る職人がいなくなっている事が話題に
なったりしますが、自分の回りでもこの問題が出てきました。

前述の刃物はなんとか既製品で代用できましたが、
「新しい刃物屋さん探さなくちゃ」という機械屋さんの言葉は届くのでしょうか。
どうかいい結果が出ることを願っています。




2018年9月29日

ウォールナット


塗装と調整の繰り返し。だんだんと色が深くなっていく。




2018年9月4日

へたへたソファーの張り替え


鎌倉稲村ガ崎のお客様からお気に入りのソファー張り替えの
ご注文をいただきました。

全面カバーリングの本体に羽根クッションの載っているソファーですが、
30年程前のお買い上げ以来、カバーの交換しかされておらず、本体中身が
くたびれたためクッション材の交換を含め、全面的に張り替えることになりました。

作業はカバー下地のシーチングを剥がし、ウレタンを交換するところから
始めたのですが、そのウレタンを支えるウェービングテープは伸びきり、
木部もねじれて壊れていたので、その修理から始めることになりました。

替えるものはすべて交換し、使えるものはメンテナンスをして張り直す。
ソファー本体もクッションもしっかりと腰を取り戻し、お客様にも
喜んでいただけました。



今回はフルレストアと云ってもよい作業内容。
長さ2,4mの大きなソファーのため、搬出入で少々苦労しましたが、現場での
組み立ても無事終わり、安心しました。
(帰りのしらす丼のウマいこと!)



2018年8月22日

鳥羽の鯨



三重への帰省を利用して、内藤 廣さん設計「海の博物館」を見学しました。
ここは基本的には、三重県下の漁労者の使用していた漁労道具全般を

収蔵する博物館。

展示物を意識したのか、船底を思わせる独特の架講の建築です。


建設当時、博物館の運営は民間財団だったため、設計者の内藤さんは
「『金のない民俗系博物館』のため、来る日も来る日もコストと戦いつづけた」
と著書で表しています。
そんな苦労があったにせよ、まるで大きな鯨の胎内に潜り込んだかのような
スケールの大きさと、不思議な居心地の良さは何にも代え難いものでした。








2018年8月2日

ベンチソファ−


横浜市都筑区のマンションリノベーション現場にベンチソファーを製作。
昼寝用のデイベッドとしても使用できるように、間口3m 奥行き85cm
大きめのサイズ。

製作は、奥行きの大きさと背中の角度の調整に気を使いましたが
現場には、端正なしつらえ、風の抜ける気持ちの良い場所が出来上がりました。
大人も子供も飼い猫も、うたた寝したくなるような居心地です。



内装設計・施工 「株式会社 中山建設」
         神奈川県横浜市都筑区池辺町1216
         045-941-5336
         nk@nakaken.info





2018年7月23日

ダイニングテーブル



昨年、格子戸収納を納めたお宅にテーブルを納品です。

材料はクルミ。寸法は1500w × 850d × 740h。




2018年7月19日

フェザークッション


張り替え前のソファーのクッション。
フェザー(羽根)は芯があり弾力があるため、ソファー・椅子のクッション向け。
ダウン(胸毛)は軽く保温性が高いため、コート、布団などに向いている。

今回、鳥の羽毛の役割の違いを、あらためて認識。




2018年7月15日

アンティーク調?


鎌倉市のお客様にスツールを製作しました。
工房にいらした時、その丸いフォルムを一目で気に入ってくださり
チークでの製作をご注文。
材料が高価なため、少々値の張ったものになりましたが、自分の家具を
気に入ってもらえるというのは、なかなかうれしいもの。

ちなみに座は柾目で、というオーダーでした。




2018年6月21日

ダイニングセットとその他、納品



ダイニングテーブルとダイニングチェア2脚、張り替えたいす4脚を長野県に
納品しました。

テーブルサイズは 長さ約1800mm × 奥行き約800mm × 高さ700mm。
天板は栗、脚と椅子はナラでの製作。

八ヶ岳の別荘用にダイニングセットを探し、あちこちの家具屋さんを見て回っていたお客様、別件で工房にいらした時、立てかけてあった栗丸太材を見て一目惚れ。
その場で椅子とテーブルの注文をいただきました。

納品したダイニングセットを目に涙を浮かべて喜んでいただき、その後も
うれしそうに撫で回してもらっているテーブル。

なんて幸せな家具なんだ、と思いました。末永くご愛用ください。


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2018年6月11日

エアコンルーバー製作


木のパズルみたいで面白いなっと。いそげ、いそげ!



2018年6月6日

ラダーバック・ダイニングチェア


ダイニングチェア・ペーパーコード仕様。
細部デザインの変更、座り心地の改善を行いました。

椅子は製作の難度が高く手間がかかる上、あまり利益が期待できないので
お寿司屋の小鰭・シンコと同じく、やせ我慢で製作している所があります。
別名『家具屋の小鰭』。

その反面、椅子は愉しく華のある家具だと思う。
誰かに喜んでもらえるような椅子を作りたいものです。

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2018年5月30日

偉そうな事、言えた口じゃないけどサ


最近張り替えた椅子、二重張りがしてありました。
海外で張り替えた椅子みたいだけど、前の布地すら剥がさずに新しい布被せて
「はい、張り替えでござい!」
よくこんな事出来るよね。

アタシの親方が「椅子張りなんて、いくらでもゴマカシが利くんだよ。
絶対こんな事するんじゃねえぞ」なんてよく云ってました。

近ごろはお客さんも新しい布被ってりゃ、張り替えた。なんて思う方も
いるようで、そこをごまかしたり、判んなくなった業者も増えてきた。
値段の高い、安いも大事だけどさ、そんな所も意識して見てもらいたいな。





2018年5月22日

Across the Universe (exhibition)


切り絵作家 矢口加奈子さん「家具つまみ専門店 FACTIO」村越さんと恊働した
椅子が新宿伊勢丹で展示されました。

切り絵以外にテキスタイル製作も行う矢口さんの布地、村越さんが設計・デザインした椅子、これを自分が木部製作・クッション張り込みを担当し、矢口さんの企画展に出展する話です。

松村 勝男さんのデザインから発想された椅子ですが、製作はそれぞれ似ている
部品をニャトー・チェスナット等、異なる材料で製作すること、脚部が8本
あること、また、それをパズルの様に組み合わせて考えなければならないので
意外と混乱しました。

しかし出来上がってみると、エキゾチックなテキスタイルの似合う、プロポーションの良い椅子になりました。

この後、量産仕様を製作し、オーストリア・ウィーンで販売する話も持ち上がっています。




2018年5月8日

中国の旅


GWを利用して中国湖南省へ出かけました。
上海を経由して、中国国内便で張家界空港へ、そこから天門山や鳳凰古城、武陵源
を回るコースです。


ガラスの桟道や吊り橋など、いわゆる観光施設も見学したのですが、それ以上に
圧倒さたのは街や人々のエネルギーでした。
みんな、よく食べ、よく笑い、よく喋り、自己主張をはっきりとする。
すべてを呑み込んで爆発的に発展している中国の勢いを垣間みた気がしました。




中国の旅 2


今回、後にハンス J・ウェグナーの名作椅子 Yチェアのデザインルーツとなる
圏椅(クァン・イ)を目にする事ができました。
中国・明代に作られた椅子が原型ですが、これは後年製作されたものと
思われます。

ウェグナーが圏椅にインスパイアされ、1944年頃、China Chairのデザインを
発表した当時、世の中には現在ほど情報は溢れていなかったはずです。
そんな状況で圏椅を発見し、エッセンスを掘り起こしたウェグナーの慧眼には
感服するしかありません。




閑話休題

鳳凰古城を見学している時、地元の少数民族 土家族(トゥチャ族)の人々が
背負っている竹かごを見て、いいな、と思っていました。
そんな時に街を歩いていると、観光客向けの賑やかなお店の間に、地元の
かご屋さんがひっそりと店を開けているのが、唐突に目に飛び込んできました。
即座に値段交渉・購入となりました。

無事竹かごを背負ってお店を出たのですが、それからはどこへ行っても
注目される羽目になりました。

バスの中、ホテルの中、揚げ句は空港。
子どもすら入りそうな大きさの竹かご、飛行機の手荷物カウンターで
交渉に交渉を重ね、強弁の末、機内持ち込み扱いにしてもらいましたが、
カゴを背負って出発ロビーに降りて行った時、何百人分もの視線が一点に
注がれる。

飛行機に乗り込むと客室乗務員、乗客、すべての視線が注がれる。
「Great !」「渋いかご !」

普段、強面仏頂面の手荷物検査場の係員全員が笑った事は、忘れられません。




2018年4月24日


椅子の笠木を木取っていたら、表面には無かった傷が現れた。
傷を何とか逃がせないかとあれこれと試しましたが、やはり真正面に出てきます。
勿体ないナ、と思いながら材料を差し換えることにしました。

何でも自然の素材を相手にしていると現れる材料の不均一さ、歩留まりの悪さ。
そこではじかれた材料の事を思うと少し胸が痛む。

「仕様がないよ。まァ、俺たちの仕事はそういう事の上に成り立ってんだ」

昔の職人友達の言葉が、やけに胸に響きやがる。




2018年4月16日

間仕切り収納


藤沢市・本鵠沼の住宅に間口3m × 高さ2,4m × 奥行き65cmの間仕切り収納を
製作・納品しました。材料はシナ合板。

10年前に建築家 根岸正典さんの設計で住宅を建てられ、竣工当時、予算の都合で
製作を見合わせていた子ども部屋の間仕切り家具を、子どもの成長に合わせて
製作することになりました。
男の子の2人兄弟ということもあり、家具の背板全面に防音用のプラスターボードを
挟み込み、間口半分を両面本棚収納、残り半分はクロークとその他の片面収納に
する構造です。




家具が大きい上、ボードの重量も加わり、作業場や現場での取り回しに
苦労しましたが、三方綺麗に納まり安心しました。

思春期に自分の個室を初めて与えられた時、自分専用の秘密基地ができたようで
非常に嬉しかった事を思い出していましたが、この部屋の主も相当よろこんで
くれたようです。
全身から喜びが溢れている男の子を見て、こちらも嬉しくなりました。



家具設計 「根岸正典・計画工房」
      神奈川県藤沢市川名2-1-2-4F
      0466-27-0432





2018年3月11日

0,8mm


昇降盤用のチップソーは、通常刃厚3mm、薄くても2mm程度。
今回故あって、道具屋さんに一番薄いチップソーの相談をすると
建具の組子用が刃厚0,8mmだという。

ホビー用丸ノコの刃で0,5mmは見た事があるが、本職用でまさか
こんな薄い刃があるとは意外だ。
必要に迫られていた上、好奇心も手伝って一枚購入した。

家具職と建具職、木工同士すぐ隣にある仕事なのに、ノウハウも
使う道具も結構異なったりする。




2018年2月23日

シナ収納一式


葉山カスパールに続いて、建築家 根岸正典さんの設計した新築住宅に
収納家具一式を製作しました。

リビングに4,9m × 1,4mのTV台・本棚を、洗面所には栗材天板を使用した洗面台、
玄関に1,6m × 0,9m の下駄箱を取付けました。



家具のつまみと洗面台の手水鉢は、陶芸家であるクライアントの製作です。









北東2面の抜けた、気持ちいい高台に建つ今回の建物。
陶芸家と彫刻家夫婦のアトリエを兼ねた住居、2人の選んだ
建物の外壁色のテーマは 「さつまいも」!
隣を見ると、苦笑いした設計者が立っていました。



建築設計「根岸正典・計画工房」
神奈川県藤沢市川名2-1-2-4F
0466-27-0432







2018年2月13日

ミニチュア


テーブルや椅子など脚もの家具を製作する場合、だいたいの場合
プロポーション検討用に1/5の模型を作ります。
クライアントとの打ち合わせ時、図面やスケッチではなかなか
判らない・伝わらない雰囲気などが検討しやすくなります。

・・・なんて云いながら、実はこれを作っているときが
一番楽しいのだ。




2018年1月30日

2018 だるま市


今年も工房近くのだるま市へ出かけました。
普段は歩いている人も少ない街なのに、両脇にテキ屋の並ぶ狭い参道は
人いきれでごった返し。
片田舎で開催されるゆえ、昔ながらの縁日そのままの雰囲気。
人の波をかき分けかき分けたどり着いた不動尊の境内では、一年のお役目を終えた
だるまが山になっています。

あんな顔、こんな顔。
どんな願いが叶ったんだろう。

今年も一年おきばりやっせ。新しいだるまを抱えて帰路につきました。





2018年1月10日

ハイバックチェア張り替え


寒中お見舞い申し上げます。
昨年末からのハイバックチェアの張り替えが完了しました。
柄合わせ無しでお客さまが選ばれた裂地での張り替えですが、
ハッと目をひかれる華やかな椅子に仕上がったと思います。

今回のような張りぐるみの椅子の張り替えは久しぶりで、クッション材
の補充やダブルパイピング(二本玉縁)の縫製など勘所を思い出しながらの
作業でした。
それでもキャリアをスタートさせた頃から好きだった古い椅子の張替え。

作業を進めるのは非常に楽しい時間でした。




さあ、遠慮せずに