曲線考
最近ダイニングテーブルを製作しています。
まだ完成写真はお見せできませんが、部品のR(曲線)で随分と考えました。
5mm変えては元に戻し、一度削ったものをもう一度やり直し・・・。
あれこれいじっているうちにひとつ、「これだ!」というRが出来上がりました。
心の中で(これが僕の曲線や)という声が聞こえてきます。
その時ふと思い出した事があります。
渡辺 力さんという、今年1月に101歳で亡くなったデザイナーがいます。
プロダクトデザインの超大御所として90歳代半ばまで活躍していた方ですが、以前私が勤めていた木工所に10年ほど前、力さんがご自身でデザインされた特注家具発注のためいらっしゃったらしいのです。
その時の力さんの家具のデザインでどうしても作りづらい所がある。
その形を簡単なものに変えれば手離れも良くなり製造コストも下がる。
なのに力さんは頑として形状変更を認めなかったらしいのです。
その時力さんが放った言葉が、「これは僕の曲線だから」。
この言葉で親方衆もしぶしぶその形を製作したらしいのです。
「頑固なジイさんで困ったよ」とジイさん親方は笑っていましたが、その時この話を聞いた自分はとくに気にも留めていませんでした。
ところがテーブルを製作している時に、なるほど、こういうことだったんだな。と思い出しました。
人からみれば何も気にも留めないような所に考えを巡らせて悩む。
そのようなことの積み重ねで自分らしい形というものが出来上がってくる(発見されてくる)のかもしれません。