ソファーと羽毛と驚きと
全長2,5mという巨大なソファーを張り替えました。
イタリアはB&Bというメーカーが10年程前に発売していたソファー、との事。
いまはもう絶版になり製造していないらしいのですが、愛着を持って使用しているので
張替えができないか、というご相談でした。
最初相談に工房へいらした時はお客さんのお持ちしたカタログを見て、軽自動車並みのその値段に驚き
実物を拝見したときはその大きさに驚きました。
なんとかご自宅のマンションから搬出を済ませ、工房で裂地をはがし始めたのですが
次はそのソファーのあまりにも高度に洗練された企画・技術に驚きました。
普通、このようなソファーを見た時、自分たちのような特注ものをつくっている人間は
木部の構造はどうなってんだろ、と思いますが、このソファーは木部がまったく無く、
硬質ゴムの細いフレームに後はすべて発泡ウレタンの固まりで出来ていたのです。
幸い発泡ウレタンはヘタリがなく、チップゴムをすこし補充してベースを作れたのですが
もしも発泡ウレタンがへたっていたら全く手の出しようがありませんでした。
このような構造のソファーは大メーカーが膨大な時間と人間、そしてお金をかけ企画をし、大掛かりな生産設備を
製造し、そこからオートメーション的にソファー生産をするものなのです。
ま、まさか、そんなものがこの農家の納屋跡 工房へ来るなんて。と思いながら布地のパターンの型を取り始めましたが
デザインもまた高度で複雑なものでした。
たとえば、背中が角度を変えながらねじれて座面につながり、その座面も傾斜の角度と座の大きさが変化している、というものです。
これはゼロから作れ、と云われても・・・。などと思いながら張替えを進めたのですが、
今回は普段あまり採用する事のない羽毛のクッションを使用してみました。
ふかふか。 |
コストはグンと上がりますが、ウレタンゴムのみのクッションよりも「バフッと」した座り心地になります。
そして羽毛の下は固めのウレタンクッションを入れ、体をしっかりと支えてくれるようにしました。
量産メーカーのソファー製作の仕方、普段あまり使うことのない材料へのアプローチなど
勉強になることが非常に多い仕事でした。
ただ、まだ学習していないことは、いまだに張り替え前のソファーの写真を撮り忘れ続けることでしょうか。