姿見納品
それは横浜青葉区Tさんの一本の電話から始まった。
「もしもし、Tです」
「あ、おひさしぶりです」
「姿見ほしいからひとつお願いします」
「え・・、なにかご希望のお値段や仕様はありますか?」
「ん〜、全部まかせるから。よろしく。じゃあ」 ガチャン。
・・・・。
一気に頭の中が真っ白に。
姿見、姿見、すがたみ・・・。
大きさはどうしよう?
どんな雰囲気がいいのかな?
お値段はいくらくらいで出来るだろう。
このようにお客さまからの細かいご希望のない場合、お客さんの
雰囲気や趣味から家具のデザインを考えて行きます。
今回の姿見、以前に納品でお邪魔したTさんのお宅のテレビが
今様のスマートテレビだったことからインスパイアされ、とにかく
木材でどこまで細いフレームにできるかに挑戦してみることにしました。
構造はすぐに決まったのですが、問題は鏡を納めるフレームの強度です。
それからは街を歩いては窓枠に目がいき、電器屋さんではテレビのフレームを眺め、
あげく、美術館では作品ではなく額縁を舐め回すように覗き込み、警備員に注意される始末。
そうして思い切ってエイヤッとフレームの太さを決定したのですが、鏡というものは非常に重く割れやすく、またかなり高価なものなので、製作中はもちろん、納品までひやひやしていました。
鏡は美容院などでも使われている高精細ミラー、180cm × 40cmの大きなものを採用。
何もかもばっちり映ります。
姿見を自立させるためのスタンドの構造をふくめて、ずいぶん頭を悩ませましたがお客さんには気に入っていただけたようです。
本革を2枚縫製したバンド。実はいちばん見てもらいたい所です。 |