2015年4月4日

南会津の旅1


丸太材を買おうと思い、福島県は南会津まで旅に出ました。
先週、三重県に納めたテーブルの後釜の材料探しと、以前よりの念願であった
丸太買い・製材・桟積み乾燥に手を出そうと考えたのです。

南会津に、丸太の販売を小売相手でも丁寧にしている材木屋さんがあり、そちらへ出かけました。
丸太を置いた土場。スケールが大きすぎて自分の感覚が狂いました。

今回初めて知ったのは、福島はとにかく東西横方向に大きい!ということでした。
三重出身の自分は、福島とは南北縦方向に大きい。と思い込んでいましたが
南会津からは太平洋へも日本海へもほぼ200km強。
福島の地図を見ると、南北3つに太平洋側から「浜通り」「仲通り」「会津」と地域が分けられ
さらにそれぞれも縦方向に相当な距離があります。

上京して知り合った福島出身の友人Y君が、初対面で「俺、Yだっけ、俺、Yだっけ」
と言うのを聞いて、『そんなん知らんわ。自分の名前忘れたんかい!』と心の中で突っ込んだのですが
それは福島なまり(彼は郡山だったか・・・)で「俺、Yだよ、俺、Yだよ」と言っていた事を知って以来の
感動に似た福島との邂逅でした。




買い付けは初めて、という事もあり、行く前に購入を決心しておいた
クリの板材とナラはすぐに購入したのですが、
土場に転がっていたオニグルミ購入の決断に時間がかかりました。

岩手産・樹齢80年、大きさは長さ2.1m 径は47cm。少々曲がり、節有り。
材木屋さんは「これはなあ〜、いいんだけどねェ〜。初めて買うならもっとまっすぐで安全なのをおすすめするなあ〜」

頭の中はまっ白です。

自分の手持ちの予算と、わざわざ福島まで来たんだし。という気持ちと
目の前の丸太の値札とおすすめの丸太の値札。
材木屋さんがそこまで言うこの丸太。鋸を入れたら何が出て来るのだろう。
失敗するのかな。
でも1枚くらいは良い板が出るのでは?
でも失敗したら。
でもお値打ちだし。
でも。
でも。

すべてが一緒くたになって頭の中でどろどろになって回転しています。

悩みに悩んで言動が怪しくなった自分を見てか、材木屋さんが目の前の丸太にプライスダウンした
値段を提示してくれました。

「製材代込みでこれでいいですよ」

必殺の呪文です。駆け引きレベルの低い自分は一撃で倒されました。
午後から製材を始める事になりました。



南会津の旅 2


材木屋さんの一押しで購入したオニグルミ、午後一番で製材台に載せられ
さっそく製材の開始です。

製材は材をトロッコのような台に載せ、巨大な帯鋸で板材を挽いていくのですが
一番最初、どのように鋸を入れるかで材料の取り都合が変わってきます。
そのため、鋸を入れる前に製材屋さんと丸太を眺め回し、どのような材料が
欲しいのかよく話し合いをします。

昔、何度も親方の製材を眺めていた時は何も感じませんでしたが、自分の材料を挽くとなると景色が全くちがって見えます。
巨大な帯鋸の回転する轟音と、その責任感からまたもや頭の中が真っ白です。
すると材木屋さんが耳元で叫びます。

「他人の製材を見てるのと、自分の材を挽くのは全然ちがうんだよね〜!わっはっは!」

全く同感です。
結局材木屋さんのアドバイスにしたがって鋸を入れることにしました。


轟音の中製材台が走り出し、一番鋸で節と割れが出たときはドキリとしたのですが
材の中心に製材が進むうちその傷跡も消え
非常に色味のいいクルミ材を挽き出すことができました。
ウォールナットのような色。


製材が終わったら次は桟積みのため、皮を剥きます。
皮のすぐ下にある甘皮は木の成長部分で非常に栄養があるらしく、皮を剥がさないと
桟積み乾燥中に虫が入る可能性が高くなります。その予防策です。




南会津での作業はここまで。後は製材した材料を東京郊外まで運び、桟積みをしました。


これから約2年天然乾燥させます。材は乾燥中にねじれや割れが入ったり、虫害を受ける可能性があるため
こまめに観察する必要があります。
乾燥が終わる頃、このクルミは果たしてどうなっているのか。そしてそのころ自分はどうしているのだろう。
こんな長いスパンで物事を見守るのも近頃なかなか無いことで、材の仕上がりを考え待ちながら暮らすのも面白いものだな、と思いました。

木工をしていてもなかなかご縁のない丸太買い。
材料屋さんに電話一本をかけると製品化された木材が届けられるような時代ですが
自分で足を運び、丸太の状態から材料を切り出し桟積みする。
非常な手間ですが、そこまで手を出すことで見えてくる木や材料、日本の林業や製材の現状。
家具を製作するという行為にもよい刺激を受けました。



今年は暖かくなり丸太もシーズンオフに入りました。
秋口に入り気温が下がり出したころ、また会津に出かけようと思います。


南会津への旅程での美しい景色。
宿の民宿では炉端で岩魚に舌鼓を打ちました。





追文


今回の福島への単騎行、材料以外にも色々と考えさせられる事がありました。

こんな事を言っては何ですが、東京では何となく東日本大震災は
もう他人事、済んだ事。という空気が流れている気がします。

しかし福島のローカルニュースで毎日流れる原発・放射能のニュース。
地元の人や宿の女将さんから聞く「フクシマ」への風評被害や県内での
差別意識の発生の話・・・。

東京やその近郊に暮らす自分たちは、何も終わっていないのに何を
終わったような顔をしているんだろう。と思いました。




2015年3月29日

耳付き材ダイニングテーブル


三重県Bさま邸、ベンチと同時に納めたのがこのダイニングテーブル。

長さ約2.1m、巾1.1mのこのテーブル。この大きさもまたお施主のB君との妙なやりとりで
決定しました。

「巾1.1m? やめとけ、そんなん使いづらいで。普通は80cmか90cmくらいが一番使いやすいって」
「いい。その丸太板で取れる一番大きい寸法で作って。とにかく大きかったらええねん!」
「そんなん・・・、絶対使いづらいと思うで」
「『ありのまま〜』がええ!」
「・・・・」

またもや押し切られる形でスタートした製作ですが、板厚もできるだけ厚く。という希望通り、板厚45mmという結構厚いものになりました。


オニグルミの優しい雰囲気と、脚部や、天板の反り止めのための吸い付き桟も
厚さ70mm角のナラ材から削り出す。という仕様になったこのテーブル。
群馬で修行していたとき耳付き材は毎日のように見ていたものですが、久々にそれで製作してみると、世界でただ一つの物を作っている、という実感が強く
自分の行く先を考えると立派な道標になってくれそうな予感がしました。







今回の2つの仕事、その大きすぎる大きさからいろいろと心配したのですが
それが全て杞憂に終わるほど、この建物はおおらかで気持ちのいい空間でした。


テーブルもベンチも末永く使ってもらえますように。



2015年3月28日

据え付けの大きなベンチ


三重県のBさま邸に家具を2つ納めました。
1つはダイニングテーブル。もう1つがこちらのベンチ。

全長が5.2m、奥行きが90cmの巨大なベンチです。
下台はチェリーの化粧合板、座面と座面の間にもチェリーで収納を製作しました。

注文をいただいたB君、実は高校時代の同級生。そのお陰か、打ち合わせも緊張しない
面白いやりとりが交わされました。
自宅を新築する、との事で、最初話をいただいたときまず思ったのはベンチというより
もはやデイベッドと思われる程の奥行き寸法についてでした。

「おいおい、そんなに大きいとベンチとしては使いづらいで。40cmか50cmくらいやとあかんの?」
「あかん。とにかく大きかったらええねん!90cmでやってくれ」
「は?・・・・大きかったらいい!て、・・・ほんまか?」
「ほんまや!とにかくこれでやってほしい」
「・・・・」

漫才のようなやりとりの末、普通あまり見かけないサイズのベンチを製作することになりました。
製作するにあたって悩んだのは、まだ図面でしか存在しない現場への納まりでした。
最初は無垢材で下台を作ろうかな、と考えたのですが、窓際で常に陽が当たる場所なので
反りや収縮を考えると、今回は化粧合板を採用しました。
また、建築現場の常で細かい寸法は現場合わせをする必要があること、現場が遠いので
簡単に現調ができず、大工の棟梁と電話口で話すだけの寸法で製作を進めなければいけない事が
なかなかプレッシャーでした。

窓の腰壁と高さが揃えてあります。


結局、納品は現場で削り合わせが必要だったもののうまく収まり、懸念していた奥行き寸法も
部屋のスケールに合い、驚くほど居心地の良い納まりになりました。



そして次はテーブル。






2015年2月15日

マグネットハンマー


家具製作といっても様々な専門職があり、それぞれに専門道具があります。
テラモトでは木工、椅子張を行っていますが、その中で椅子張に使うマグネットハンマーをご紹介します。




マグネットハンマー、名前のとおり頭が磁石になっています。
口の中に3分釘(9mm釘)や5分釘(15mm釘)を含んでおき、ピンと張った張り地を片手でおさえながら
口のなかの釘を空いた一方の手に持ったハンマーの頭にくっつけ、釘を打ち込み張り地を留めていきます。

現在は張り職でもあまり使われなくなったマグネットハンマー、慣れるまでは大変ですが
一度慣れると狙ったところに釘が打てるようになり、非常に便利です。

このハンマー、少し前までは鍛冶屋さんが張り道具の入った段ボールをバイクの荷台にくくりつけ
あちこちの工場を売り歩いていました。
職人が自分の道具や気に入ったハンマーの頭を買い、それを自分で柄にすげて使用するのです。

面白いのは手作りの証なのか、柄をすげる櫃穴やハンマー自体の形がそれぞれすこしづつ違いました。
そしてそれを各々が自分で削りだした柄にすえる・・・。
この時点で世界にひとつだけの自分用ハンマーが誕生します。

大量生産のものを機械ですえるわけではないので、ハンマーのバランス、頭の角度、
振ったとき頭の当たる場所、柄の長さ、握り。すべてがそのハンマーのみのオリジナルのものになります。
そしてその自分のハンマーで釘打ちを覚えると、他のハンマーはまったく使えなくなります。


自分用、親方A氏用、親方K氏用。
全然違うでしょ。

 何十年というキャリアを持っていた親方に自分のハンマーを貸した時も、まったく思い通りに釘が打てず
「こんなに打てなくなるとは思わなかった」と呆れていました。


そして自分も他人のハンマーでは釘が打てなくなりました。


そうなると人間面白いもので、自分のハンマーを非常に大切に扱うよう
になります。
働き出してまだ時間の浅いころ、人から借りていたハンマーの柄がぽろりと
折れたことがあります。
柄に寿命がきていたようですが、今思い出すとなんとも言えない気持ちに
なります。



椅子張りには他にも様々な道具があります。
木工道具ほど一般的なものではありませんし、使用する機会もどんどん
減ってきています。
また機を見て紹介できれば、と思います。




2015年2月11日

デッドストック家具


目黒区のお客さまからのご注文で、40年以上前に製作されたと思われるオットマンを張り替えました。

張り替え前

最初拝見してお話を聞いたところ、ずいぶん大昔、買ったまま倉庫で眠っていたものが最近出てきた。とのこと。
中身に問題がなければ表地のみ張り替えてほしい。というお話でした。

仕事を引き受けたときは、使われていなかったのならばそのまま張り替えられるかな、と
思っていたのですが、布地をはがしたときその考えが甘かったことを認識しました。



確かにこの家具が使用されていた痕跡はなかったのですが、材料が古すぎて枯れ切っていたのです。

このままではいつまで耐えられるかは時間の問題だし、せっかく張り替えるのならば
中まできちっと手を入れましょう!という事で、綺麗だったワラ土手とバネはそのまま流用し、
あとはすべて入れ替えることにしました。

布をはがし、昔の職人さんの仕事を見ながら作業を進めたのですが、昔の仕事ってのは
キレイだな〜。と感心しっぱなしでした。
糸の絡げ方、釘の打ち方、バネの置き方等々、自分が親方に怒られながら覚えて行ったことが、そのまま教科書通り
目の前に拡がっていました。



ホントはワラ土手もないのですが・・・。
 張り替えは、まず麻テープ(力布)で受けを張り、

 バネを並べ、セル糸で力布に絡げた後、バネ糸で編んで行きます。


そして「受け」を張り、ワラ・ファイバーで下地を作り、下張りを張ってからウレタンクッションを載せ、
さらに「かぶせ」を張ったあと綿を載せて、下ごしらえは完成。

見ちがえった?

その後、表地を張り完成です。


現在よく使われる、ベニヤ板にウレタンを接着して下ごしらえお仕舞!という仕事に比べて、ばらバネ、ワラ土手の仕事は
下ごしらえの手間が何十、何百倍もかかる気がします。
見た目は同じでも、座り比べるとまったく異なる座り心地。
この椅子はどうしてこんな値段なんだろう。と思うとき、その中身にまで考えがおよぶと
家具の見方が面白くなってくる気がします。



PS. 
最近口の中に5分釘を入れて、マグネットハンマーで釘を打っていく作業が大好きなことに気がつきました。
できることなら一日中釘を打っていたい。。。

張り屋玄翁ともいう。

次回はこのマグネットハンマーのことを書きましょうか。




2015年1月29日

ソファーサイドテーブル・・・?




珍しい形の家具を製作しました。
先日B&Bのソファーを張り替えたお客さまからのご注文。

「ソファーに腰掛けたままでお酒を呑めるグラス置きがほしい」
「部屋に散らばりがちな雑誌、新聞、リモコンをまとめる場所がほしい」というオーダーでした。
オーソドックスなソファーサイドテーブルも考えたのですが、なにぶん巨大なソファーなもので
あまり部屋のスペースを取らない家具が欲しい。ということも条件のひとつでした。


スケッチを描いたり、試作品を作ったりいろいろ考えました。
その時、ふと、一般的にソファーの下はデッドスペースだ。という
ことに気がつき、そこに家具のベースを差し込めば邪魔にならない。と連想し、
さらに昔の国鉄の特急列車によくついていた、シートの肘に収納されている
折りたたみテーブルに考えが飛び、このような形になりました。



あまり作った事のない形なので、いちど試作品をお持ちして、使用していただ
きながら細かい仕様を煮詰めて行きました。
テーブルトップも最初は乗り物のテーブルいわく、グラス底に合わせて丸く掘り込んだのですが、最終的には全体を掘り込み。

お盆ですね。





納品も無事済んで安心しました。

今回の家具もその場所、その状況に合わせて製作する特注ものならではでした。
寸法や細部の仕様変更も可能です。
是非あなたのソファーにもいかがですか!(と、商売っ気を出してみる)




作り慣れない形のものを製作するときはいつも緊張しっぱなしですが、
それが無事納まったときはいつも体の力が抜けるほど安心します。









さあ、遠慮せずに