2016年3月25日

葉山 カスパール


神奈川県の葉山にリニューアルオープンする「ブックショップ カスパール」
店舗兼住宅の新築にあわせ、店舗部分の什器とプライベート部分の本棚を製作しました。

こちらは本棚。


以前納めたギャラリーテーブル同様、建築家の根岸正典さんの設計した建物に
家具設計と製作の恊働として、製作を担当しました。

店舗キャッシャー台とカウンターテーブル。

今回はラフな仕上がりが欲しい。という事で、それぞれ
シナ合板、ラワン合板、ラーチ合板を使用して製作。
本棚は2020mm(w)× 2280mm(h)、いわゆる壁面一杯の収納として。
カウンターテーブルは2400mm(w)の大きなものになりました。


納品してお客さんに喜んでいただいたのですが、今回リニューアルオープン
するカスパール、
以前ドイツに留学していた店主さんが、ドイツや、ハンガリー・チェコ等
東欧のヴィンテージ絵本をはじめ、日本の絵本・書籍など、自分で大切に
したい本を集め、販売するセレクトブックショップです。

オープニングパーティーで訪れた店内は、なるほど年代を問わない品揃えで
目移りするものばかり。
本好きとして、思わず絵本を数冊買い求めてしまいました。


当日は催しのスペースの都合上、在庫をすべて出す事ができなかったらしく、
再訪の楽しみを残すものとなりました。



お店は葉山の目抜き通り沿いにあるため、往来の車も歩行者もみんな
注目する場所になりました。
併設のギャラリーを含め、様々な催しが開かれるこのお店、
家具の様子を見がてら、ちょくちょくとお邪魔することになりそうです。





本屋の証。


「BOOKSHOP Kasper」
神奈川県三浦郡葉山町一色1462-5
046-874-7031
http://www.kasper.jp

建築設計「根岸正典・計画工房」
神奈川県藤沢市川名2-1-2-4F
0466-27-0432




2016年3月12日

四たびのカウンター下収納


横浜青葉区のKさまのご注文で、カウンター下収納を製作しました。



ある日工房にいらしたお若いご夫婦。
お話を伺うと、どうやら新築のお家にお引っ越し。そこで対面カウンターの下の
デッドスペースが気になり、量産家具のお店を探したが意中のものが見つか
らなかった。というお話でした。
どうしても気に入るものがなく、では特注製作しようと作業場までいらしたお二人、
製作した家具が溢れ、半ば倉庫と化したショウルーム。そんな状態に慌てながら
しどろもどろになり家具の説明をする怪しい男を前に「うん、ここに頼もうか」「そうだね」

『・・・え?ホント?』
その蛮勇と判断のスピードに思わず目を丸くしたところから製作が始まりました。




打ち合わせの結果、背板無し・可動棚・扉をつける。という仕様は決定しましたが、
家具本体とカウンター天板の出っ張りをどうするか、という問題が発生しました。
最初は「家具がカウンターから出っ張ってもいいですよ」というお話でしたが
やはり使い勝手がよくないのと、ホコリが溜まる。等の問題に配慮し、扉の上部をオープン
して、奥行きをすぼませることにしました。



壁面と床にしっかり固定してあります。


納品の前日まで細部の調整を行い、その晩は色々考えて目が覚めてしまいましたが
家具をお持ちした現場でご主人が「カッコイイ!いいね!カッコイイ!」
と喜ぶ様子を見て、体から力が抜けました。




新築のお家に新しい家族。この収納もこれからどんな変化をしていくのだろう。
いろんな思い出が刻み込まれていくといいな。そして生活で使われ、時間がたった
この家具をまた見てみたいな。
そんなことを考えながら、春の現場を離れました。




2016年2月2日

ふと、


随分前の事になるが、ある新聞のコラムで「時分の花・真(まこと)の花」という言葉を目にした。
能の世界で若さにまかせた一時的な芸の面白さを時分の花、逆に鍛錬を重ね、本当に
自分の身に付いた面白さを真の花と云うらしい。
これは芸の面白さだけでなく、職人の技術やもっと広義的なものにも当てはまる。

兎角、ほんの些細なことで左右されていきそうな人の指向や人生、
そのようなことをしなやかに受け流していく強さも「真の花」だろう。

果たして自分の今の立ち位置はどうなのだろう。
作業の手を止めて少し考えてみる。











2016年1月21日

研究室にて


都内の大学で社会学の教授をされているH様から、小さめの収納のご注文をいただきました。

サイズは 1000mm (h) × 600mm (w) × 300mm (d)

以前よりご自身の研究室にこのサイズの収納を探していたらしいのですが、
良いものが見つからない。それならば特注で製作しよう。という事で注文をいただきました。




構造としては複雑なものではありませんが、家具の雰囲気をシャープなものにするか、
少し線の太いものにするかで随分悩みました。
しかし、お話を伺っていると、件の研究室は「膨大な量の蔵書」が溢れ、さらに「雑多な
ものが氾濫している」という言葉が引っかかりました。

ヴォリュームが大きくない家具なので、あまり線が細いとその中に埋もれてしまう気がし、
今回は少々線太な家具にしました。


納品にお邪魔した研究室、どんなものかと扉を開けたところ、両壁棚一杯の資料・書籍の山、
ウイリアムス・モリスの壁紙、気軽に出入りするゼミの生徒さん達、その手にはなぜかお茶碗に盛られた白米・・・。

視界に飛び込んできたのは湯気を上げる炊飯器。
「いや〜、いつの間にかご飯も炊くようになって。ゼミ生がよく食べるんだよ」

・・・まるで、どこかの部室に紛れ込んだような感覚を味わいながら、
自分が大学生のときゼミや教授はこんなにリラックスした関係ではなかった。
もしこんな場所があれば、学校やあのころの自分の時間がどれだけ
楽なものになったんだろ、などと羨望を込めて思いました。



社会学の一環として、ライフスタイルデザイン=暮らしの価値というものも教えているHさん。
そのような方が、価値のあるものを使う、という生徒さんへの資料という意味も込めて
オーダーしてくださった今回のお仕事。

納品の時にあがった歓喜の声と、このような場に自分が選ばれたありがたさと緊張。
忘れる事はできないものになりました。




2015年12月8日

ウェービングと木部


同業の知人からの注文で、ソファーベッドの木部製作とクッション部の下ごしらえ、椅子張りを行っています。


一般的には分業でおこなう木部製作、椅子張り。
これを一人でまかなうのは比較的大変なのであまり自分からは製作しよう
は思いませんが、今回注文をいただいたので久しぶりに重い腰を上げました。

身の回りにあるソファーや椅子などの張り物、内部の細かい納まりまで判る人はあまりいないと思います。
ウェービング・ベニヤ・バネ。下地に入れるクッション基材の種類で、木部の構造も
表側のデザインも座り心地も異なってきます。

普段何気なく見ているだけの張り物の木部。それだけでも勉強になっていたようです。







2015年12月3日

階段転落防止柵


今回は少し毛色が違いますが、階段の転落防止柵を製作・取り付けしました。


以前、ベビーサークルを注文していただいた豊島区のK様。
2人目のお子さんが誕生し、つかまり立ちを始めたのでなるべく早急に納品すべし、
というお仕事でした。

今回は建築設計をしているKさんが図面を引いてくださったので、こちらは
現調・実施検討と製作を担当しました。

材料は前回とおなじくブナのソープフィニッシュ。
ブナはブナでも今回はヨーロッパビーチが手に入りました。
日本のブナよりも色が白い、と云われているヨーロッパビーチですが
加工をしていても目が詰まっている、というか、非常に粘り気がある気がしました。
うまく言葉にできませんが、昇降盤で木を裂いていてもしっとり、ヌルリとした
手応えがあるのです。




現場では既存の手すりを利用して吊り元の柱を立てました。
正面の柱を裏面から薄い板で挟み込む構造ですが、ネットのフックや斜めから走る
手すり本体をかわす事に苦労しました。





お客さま支給の金物で扉を吊り、形になりました。
もう少し細部の納まりに課題が残りましたが、その場の雰囲気によく合った
転落防止柵だと思います。

奥さまから「現状は部屋と階段が扉一枚で仕切られているだけなので子どもが非常に
不安だった。この柵で安心できます」というお言葉をいただいたとき、こちらも
なぜか安心し、家具には(今回は微妙に家具とは違うけれど)家族の時間に密着した
そんな役割もできんだなあ。と考えていました。

家の具と書いて『かぐ』。昔の人はよく云ったものだ。




2015年11月15日

木味


先日、楢材で薄板を作るために材料を半分に挽き割りました。
一枚の板を挽き割り、本を見開いたように並べると、当然その二枚の板は
左右対称の木目になります。


bookmatch(ブックマッチ)と呼ばれる状態ですが、その美しさに目を引かれ作業の
手を止めて見入っていました。

おそらく北米からはるばる海を越えてやってきたこの材料。
どんな場所で生長したのだろう。
どんな環境で大きくなったのだろう。

いつもは木材を見てその来歴よりも、傷があるかどうか、節があるかどうか、など
材木としての弱点という視線でしかものを見ていなかったのですが、節や逆目などを
生体の魅力として考えた途端に、材料の見え方がはっと一変しました。


一昔前の製材屋の老職人ならば、一目でその木材の年齢や生育環境を見抜いたはずです。
自分たちは自然のものを相手にものを作っていることを、あらためて再認識しました。

材料の魅力だけに頼った家具は作りたくありませんが、そのようなことにも考えがおよぶ
余裕と力量を持ちたいものです。







さあ、遠慮せずに