ミシン
工房で椅子張りの縫製に使っているミシンは工業用の総合送りミシン。
革や厚物を縫うときはこれでなくては、というもの。
張りの親方が70代も半ばになり、仕事を辞めるときに譲ってくれたものだ。
もう40年くらい前のミシンらしく、その使い込まれた鋳鉄の、ズシリとした
風合いは何ともいえない貫禄さえ感じさせる。
親方の名前にあやかって、「アオキさん」とか「サダオ」と呼んでいるこの
じいさまミシンはとにかく頑丈。
いままでモーターは2回変えているが、その他はまったくトラブルが無い。
「アオキさん」の音を聞いていると、親方の垢抜けた東京言葉といつもかじり
付く様に縫製をかけていた後ろ姿、そしてそれに怒られまいと必死に作業を
していた20代の自分の姿が頭によみがえる。