2013年9月12日

張替え中に考えた


大きなソファー張替えのお仕事をいただきました。
うたた寝のベッド代わりにも使われていたらしい。


3人掛け一本と1人掛けを二本。
すべて鋲打ち+クッション交換、さらに本体にも手をいれるため結構なボリューム。
しばらくかかりっきりになるだろうな、と裂地はがしを始めました。


そして1人掛けを二本はがしたところで、この二本の製作者が違うことに気がつきました。

このソファー、外見は同じ形をしていますが、座面の中の構造が二本とも全く違う作り方をしてある上に、細かい材料も違っている。

作業をしながらだんだん判ってきたのは、片方はおそらく個人の小さい特注工場に外注に出されたソファー、もう一方はメーカーが大工場で大量に張り上げたものだ、という事です。


椅子張りの世界ではよくあることなのですが、外注したときの時期やコストの掛け方、製作者の考え方や設備の差で同じ椅子でも細かい差は出たりします。
しかし同じソファーでここまで作り方や急所が違うものは初めて目にします。

はがすといろんな事が見えてきます。


両者を比べたとき、おそらく個人の工場で張られたものは、釘を打つ癖や特注屋さんらしい細かい気の使い方から、古い職人がひとつひとつ仕上げているなあ。という印象を受けました。
僕の親方も古い職人だったのですが、その時に散々叩き込まれた作業の勘所がこのソファーでは全く同じでした。

そして大工場の方は洗練され、非常に合理的な張られ方がしてありました。
材料の段取りや作業の仕方が何十本も一気に用意されていないとできない方法だったのです。
このような仕事は発想の仕方が非常に参考になります。
「ああ、こんなやり方があるのか」「この材料は大量に用意できないと大変だ」


どちらが良い、悪い、ではなく種類の違う仕事の進め方。同じ製品でも考え方がこんなに変わるのか、と思うと面白いものです。

椅子をはがしながら様々な物語を連想する。これも作業の楽しみです。


さあ、遠慮せずに