2025年8月1日

 クルミ耳付き材テーブル



ショウルーム用に共木のクルミ材でテーブルを製作しました。
このような耳付き材の場合、木取りの仕方で表情がガラリと変わるので
今回は時間をかけて、念入りに甲板の木取りを検討しました。

またこういったタイプのテーブルの脚は、もう完成され尽くした
定番のデザインがありますが、今回は趣を変えようと思い、
丸材でスッキリした意匠を考えました。


このテーブルは甲板も脚も、10年ほど前に岩手で丸太で買い、福島で挽き、
東京で天然乾燥させ、それから工場で寝かせていたものです。
甲板材の隅に、身惚れてしまうような美しい虫食いの穴が出てきました。

普段なら落としてしまうようなものですが、あまりの見事さにこれを
意匠として表に出そうと思いました。そこで虫穴に透明レジンを流し込み、
固め込んでみました。

倉又史朗さんのミス・ブランチよろしく、自然のものが一瞬で
人工物に閉じ込められたような「永遠の美しさ」に少しでも近づけないかな、
と考えました。



・クルミ耳付き材テーブル
 無垢材
 1090w × ((650d) × 700h



 

2025年6月24日

 木の感覚


最近、クルミ材の木取りをしています。

乾燥機に入れて強制的な人工乾燥をさせていない、丸太挽きの天然乾燥材ですが、
木取り中に手がしっとりしている事に気がつきました。

同じクルミでも、人乾材は乾き切り、バサっとした物を触っている感じがします。
天乾材は木の生き物感、油っ気が残っている。

木材自体にあまりストレスがかかっていない感覚を受けました。




2025年4月17日

 玄関扉


工房横に作事中のショウルームに、ミャンマーチークで引き戸を製作しました。
ガラス戸・網戸・木戸、の三枚引き戸の最後の建具。

重量対策のため、中央の板8枚を12mm厚に引き割り木取り、両端に
7mm幅で雄雌の本実(ほんざね)を突き、材をはぎ合わせたものを
フラッシュ芯材に両面プレス。
一枚の板状にしたものの四方に通しの段欠きを切り、無垢の框で組み固めました。

慣れない建具製作のため、構造と製作には頭を使いました。

春冬の冷たく強烈な北西風と、夏の西陽に耐える事、さらには
「中心のある家」へのオマージュで採用したチーク材
独特の質感が建物の格を引き上げてくれました。

今の所、箱だけが立派になっていくような気がしますが、
やがて中身も追いつけるようにがんばります。


・玄関扉
 1800h × 780w × 40t
 チーク材 / フラッシュ構造を框で組み固め




2025年4月1日

 小ぶりのダイニングテーブル


建築家・根岸正典さんの案件で、山形湯野浜温泉のKAMEYA HOTELに
ダイニングテーブルを製作しました。

届いた図面は驚くほどシンプルで、製作前はどうだろう、と思いましたが
形にしてみると非常にカッコいいテーブルになりました。流石です。

シンプルな分、各部材のチリや面の取り方に気を遣い、
構造に工夫をして強度を高めてあります。


・ウォールナットテーブル
 無垢材・突板合板 / ウレタン黒拭き取り、クリア塗装
 800w × 800d × 550h

・ナラテーブル
 無垢材・突板合板 / ウレタンクリア塗装
 1000w × 600d × 550h




2025年1月23日

 古建具


古い建具を修理のため全て分解、割れたり無くなっていた
部品を製作し、ガラス溝を突き直し、組み立て直しました。

地獄ほぞ、2枚ほぞ、馬乗りの4枚ほぞ・・・。
作られてから数十年経っているだろうに、組み立ても
ぴたり、ぴたりと決まる正確な加工。

民家の外勝手戸の様な建具にもこれだけの手間を(当然のように)かける。

高性能の接着剤や電動工具で、手離れ優先の力づくで押さえ込むような
現代の木工。

自分は特に懐古主義者ではありませんが、材料や技術の変化、
それに伴う仕事や世の中の時間の流れ方の変化。

全てが行き過ぎのような気がします。




2024年11月27日

 サイドテーブル


フォールディングチェア用に、サイドテーブルを製作しました。

3本脚のすっきりした形と、甲板をいかに軽く見せるかにミリ単位の調整を
繰り返しました。

片手で軽く持ち上がる取り回しの良さが特徴です。
直径・高さの寸法も、○・△・□の甲板での形も、自由に製作が可能です。


・サイドテーブル
 ナラ材
 260Φ × 600h




2024年9月23日

 バネ張り椅子 修理


大田区のお客さまからのご注文で、
座のバネが落ち込んでしまった小椅子を修理、張り直ししました。

目黒の骨董屋さんで、「優美で可愛らしい姿に一目惚れ」して購入した小椅子。
修理のご相談を受けた時は、木部はガタが来て、座のバネは落ち込んでしまっていました。

しかし、「一度はしっかりしたこの椅子の座り心地を体験したい」というご依頼で
座面に手を入れることになりました。

そこで座を下地まで全て剥がし、木部の仕口を取り直して再組立、
バネを吊り直し、藁土手を刺し直し、クッションにパーム材を詰めて、
元の張り地で張り直しをしました。







剥がしての釘や手跡から推定できることは、おそらくこの椅子は
最初ヨーロッパ(フランス?)で製作され、その後、一度か二度張り替えられ
日本にやってきた後、化粧程度に軽く手を入れられた。しかしその間、木部や
バネ等の基部に手が入れられることはなかった。ということでした。

見た目や大きさのカジュアルさとは裏腹に、オリジナルの中身は、馬毛や
高度な土手刺しの技術で製作されており、修行中、年寄りの親方たちが
「昔はこういうものがあった。こういうものをやったことある」と話して
いたようなものでした。

現在は手に入らなくなった材料を、入手できる材料に置き換えたりしての
張り直しでしたが、それでも全て天然素材の材料での置き換えが可能でした。

手間はかかりますが、かつては、それこそ身の回りのもので身の回りのものを
製作していたんだなあ。と感じました。

無理なくゆっくり回っていく。理想的な世の中を考えていました。




さあ、遠慮せずに