2012年5月15日

椅子の張り直し


お仕事をいただきました。
昔お医者さんが診察時座っていた
ドクターチェアーです。

お客さんが先輩から譲っていただき使用していたが
座面だけでも張りなおして欲しい。との事でした。

なるほど、もう中身が崩れてばねが暴れておるワイ。

早速外科手術。開腹してみると

もう臓物がぐずぐずになっていました。
まずはこれらをすべてキレイに取り除きます。



昔の椅子の木地仕事、今の仕事のようにベニヤを
使わず無垢のナラ材でしっかりほぞで組んであります。
このように手間をかけた仕事をすれば、いつまでも
修理ができるし初期投資が高くても長く使える。
職人衆の技も磨かれるのに。

早く、軽く、安く、という世の風潮に疑問を持つ時です。

ちなみにこの時点でこの椅子はおそらく40年ぐらい前の椅子で
以前一度、中身には手をつけず張り替えられていたものだ。
とわかりました。


バネも折れていたので交換です。


裸の木部に麻テープを張りバネを並べ、バネ糸で絡げ編んでいきます。

それからワラで土手を作ります。


あまり目にされる事もありませんが、
昔の椅子はみんなこのようにバラバネとわら土手で
張られていました。

わら土手刺し、腕が鳴るぜ!
土手をセーム糸で刺したあと、次にワラをほぐしたものでクッションを入れます。



そして下張りの後、


上布を張って仕上がり!

今回は上布を張り替えではなく、
もういちど張り直す仕事なので
見た目にはあまり変わりはありません。

ただ、以前は崩れたバネがお尻にあたって
痛くて座れなかったものが劇的な変化をしました。
お客さんにも喜んでいただけたようです。

このような中身での仕事は、なぜ張り替えの
値段が高いのかなかなかわかり辛いものですが、
張り物は意識して座りくらべると
中身の差がすぐわかるものです。

面白いものです。






さあ、遠慮せずに