2025年4月17日

 玄関扉


工房横に作事中のショウルームに、ミャンマーチークで引き戸を製作しました。
ガラス戸・網戸・木戸、の三枚引き戸の最後の建具。

重量対策のため、中央の板8枚を12mm厚に引き割り木取り、両端に
7mm幅で雄雌の本実(ほんざね)を突き、材をはぎ合わせたものを
フラッシュ芯材に両面プレス。
一枚の板状にしたものの四方に通しの段欠きを切り、無垢の框で組み固めました。

慣れない建具製作のため、構造と製作には頭を使いました。

春冬の冷たく強烈な北西風と、夏の西陽に耐える事、さらには
阿部勤さんの「中心のある家」へのオマージュで採用したチーク材
独特の質感が建物の格を引き上げてくれました。

今の所、箱だけが立派になっていくような気がしますが、
やがて中身も追いつけるようにがんばります。


・玄関扉
 1800h × 780w × 40t
 チーク材 / フラッシュ構造を框で組み固め




2025年4月1日

 小ぶりのダイニングテーブル


建築家・根岸正典さんの案件で、山形湯野浜温泉のKAMEYA HOTELに
ダイニングテーブルを製作しました。

届いた図面は驚くほどシンプルで、製作前はどうだろう、と思いましたが
形にしてみると非常にカッコいいテーブルになりました。流石です。

シンプルな分、各部材のチリや面の取り方に気を遣い、
構造に工夫をして強度を高めてあります。


・ウォールナットテーブル
 無垢材・突板合板 / ウレタン黒拭き取り、クリア塗装
 800w × 800d × 550h

・ナラテーブル
 無垢材・突板合板 / ウレタンクリア塗装
 1000w × 600d × 550h




2025年1月23日

 古建具


古い建具を修理のため全て分解、割れたり無くなっていた
部品を製作し、ガラス溝を突き直し、組み立て直しました。

地獄ほぞ、2枚ほぞ、馬乗りの4枚ほぞ・・・。
作られてから数十年経っているだろうに、組み立ても
ぴたり、ぴたりと決まる正確な加工。

民家の外勝手戸の様な建具にもこれだけの手間を(当然のように)かける。

高性能の接着剤や電動工具で、手離れ優先の力づくで押さえ込むような
現代の木工。

自分は特に懐古主義者ではありませんが、材料や技術の変化、
それに伴う仕事や世の中の時間の流れ方の変化。

全てが行き過ぎのような気がします。




2024年11月27日

 サイドテーブル


フォールディングチェア用に、サイドテーブルを製作しました。

3本脚のすっきりした形と、甲板をいかに軽く見せるかにミリ単位の調整を
繰り返しました。

片手で軽く持ち上がる取り回しの良さが特徴です。
直径・高さの寸法も、○・△・□の甲板での形も、自由に製作が可能です。


・サイドテーブル
 ナラ材
 260Φ × 600h




2024年9月23日

 バネ張り椅子 修理


大田区のお客さまからのご注文で、
座のバネが落ち込んでしまった小椅子を修理、張り直ししました。

目黒の骨董屋さんで、「優美で可愛らしい姿に一目惚れ」して購入した小椅子。
修理のご相談を受けた時は、木部はガタが来て、座のバネは落ち込んでしまっていました。

しかし、「一度はしっかりしたこの椅子の座り心地を体験したい」というご依頼で
座面に手を入れることになりました。

そこで座を下地まで全て剥がし、木部の仕口を取り直して再組立、
バネを吊り直し、藁土手を刺し直し、クッションにパーム材を詰めて、
元の張り地で張り直しをしました。







剥がしての釘や手跡から推定できることは、おそらくこの椅子は
最初ヨーロッパ(フランス?)で製作され、その後、一度か二度張り替えられ
日本にやってきた後、化粧程度に軽く手を入れられた。しかしその間、木部や
バネ等の基部に手が入れられることはなかった。ということでした。

見た目や大きさのカジュアルさとは裏腹に、オリジナルの中身は、馬毛や
高度な土手刺しの技術で製作されており、修行中、年寄りの親方たちが
「昔はこういうものがあった。こういうものをやったことある」と話して
いたようなものでした。

現在は手に入らなくなった材料を、入手できる材料に置き換えたりしての
張り直しでしたが、それでも全て天然素材の材料での置き換えが可能でした。

手間はかかりますが、かつては、それこそ身の回りのもので身の回りのものを
製作していたんだなあ。と感じました。

無理なくゆっくり回っていく。理想的な世の中を考えていました。




2024年8月11日

 彫刻家と洋裁家のための展示台



彫刻家と洋裁家のお二人からの注文で、作品の展示台を製作しました。

彫刻家の方が製材所と縁があり、天板・面材とも出処のしっかりした
ミャンマーチークで製作することができました。
また台を別々にも使える様に、ちょうどセンターでセパレートできる
構造にしました。

裏側の複雑な棚割り、面材の製材・施工等、少々苦労しましたが
チークの材質も相まって、二人の作品を引き立て、さらに展示の質を
上げることの出来る展示台が製作できたと思います。


・彫刻、洋裁展示台
 チーク材・ラワン合板
 1840w (920w × 920w) × 710h × 485d




2024年5月28日

 両面使いベンチソファー




小田原市の新築住宅現場に、両面使いのベンチソファーを納品しました。
設計者にいただいた住宅の平面計画は、ダイニング・薪ストーブ・リビングの三部屋が、複雑なスキップフロアで隣り合ったものでした。

その3つを緩やかに間仕切り、それぞれの部屋に居場所を作り出した上で、さらに
動線の邪魔をしないベンチを考えました。
そこで背中をR状にして、通り道の圧迫感を少なくするデザインを採用しました。
以前製作した蛇腹戸収納の技術流用です。

意匠・内部構造の試作を重ね、十分な強度が確認できたので、本製作に持ち込みました。

現場ではベンチソファーが据えられた事で空間に拡がりが生まれ、落ち着いた場所を作り出せたと思います。


・住宅設計
 篠原建築設計事務所

・両面使いベンチソファー
 チェリー材・クッション椅子張
 1740w × 665h × 1360d




さあ、遠慮せずに