2014年7月12日

椅子・再張り直し


以前張り直したドクターチェア、ふたたび座面の張り直しをすることになりました。
時間とともにクッション部のワラ柴がへたってしまったのでクッション材を補充するのです。

まずは裂地をはがします。
底張りをはがした所、バネには異常がなく安心しました。


前回再利用したワラ柴はへたりが早かったので、今回は新しくパームロックを詰めることにしました。
パームロックはヤシの繊維をラテックスと結合させたクッション材です。

クッション材は、弾力・耐久力・油の多さから、馬毛が一番最高!と以前親方に教わったのですが、今はあまりにも
稀少なものになってしまいました。

そこで馬毛の廉価品として現れたのが「マホラン」と呼ばれているクッション材。
こちらはユリ目の植物マオランの葉っぱを細かく裂いて繊維状にしたものですが、このマホランもいつの間にか市場から
姿を消してしまいました。
自分も椅子張り屋さんに勤めているころ、1、2回目にしたきりでした。




そしてさらに代替品として世に現れたのが、このパームロック。
場所によっては「ファイバー」と呼ばれていたと思います。

このパームロックも工程的に今ではほとんど使われなくなってしまいましたが
今回の張り直しのために、伝手を頼ってあちこちの椅子材料屋さんにかたっぱしから声をかけ、かたっぱしから断られていました。
「う〜ん、今どきそんなもの無いなあ」「ウレタンチップ使うしかないよ」

(ソンナコトハ ワカッテイル)
と思いつつ、せっかくの昔の椅子を昔のまま張り直して欲しい。というお客さんの
注文を叶えることはできないのかな。と頭を抱えている時でした。

同業者の所に顔を出したところ、そこに今まで付き合いのなかった材料屋さんがおりました。
また断られるのかな。と思いながらその材料屋さんに顛末を話すと・・・

「ん、パームロック?うちはあるよ。いくらでも手に入る」

その力の抜けた心強い言葉に、こちらもずっこけつつ、嬉しくて小躍りしたのを覚えています。



まだまだ詰めます。

ようやく手に入った詰め物。心置きなくたっぷりと補充しました。





座り心地も格段に良くなったのですが、お客さんにはどう評価されるのでしょうか。
納品を前に緊張したりもしています。







・・・そういえば最近、工場にヤモリがよく出ます。
文字通り家をお守りください。






さあ、遠慮せずに