2015年4月4日

南会津の旅 2


材木屋さんの一押しで購入したオニグルミ、午後一番で製材台に載せられ
さっそく製材の開始です。

製材は材をトロッコのような台に載せ、巨大な帯鋸で板材を挽いていくのですが
一番最初、どのように鋸を入れるかで材料の取り都合が変わってきます。
そのため、鋸を入れる前に製材屋さんと丸太を眺め回し、どのような材料が
欲しいのかよく話し合いをします。

昔、何度も親方の製材を眺めていた時は何も感じませんでしたが、自分の材料を挽くとなると景色が全くちがって見えます。
巨大な帯鋸の回転する轟音と、その責任感からまたもや頭の中が真っ白です。
すると材木屋さんが耳元で叫びます。

「他人の製材を見てるのと、自分の材を挽くのは全然ちがうんだよね〜!わっはっは!」

全く同感です。
結局材木屋さんのアドバイスにしたがって鋸を入れることにしました。


轟音の中製材台が走り出し、一番鋸で節と割れが出たときはドキリとしたのですが
材の中心に製材が進むうちその傷跡も消え
非常に色味のいいクルミ材を挽き出すことができました。
ウォールナットのような色。


製材が終わったら次は桟積みのため、皮を剥きます。
皮のすぐ下にある甘皮は木の成長部分で非常に栄養があるらしく、皮を剥がさないと
桟積み乾燥中に虫が入る可能性が高くなります。その予防策です。




南会津での作業はここまで。後は製材した材料を東京郊外まで運び、桟積みをしました。


これから約2年天然乾燥させます。材は乾燥中にねじれや割れが入ったり、虫害を受ける可能性があるため
こまめに観察する必要があります。
乾燥が終わる頃、このクルミは果たしてどうなっているのか。そしてそのころ自分はどうしているのだろう。
こんな長いスパンで物事を見守るのも近頃なかなか無いことで、材の仕上がりを考え待ちながら暮らすのも面白いものだな、と思いました。

木工をしていてもなかなかご縁のない丸太買い。
材料屋さんに電話一本をかけると製品化された木材が届けられるような時代ですが
自分で足を運び、丸太の状態から材料を切り出し桟積みする。
非常な手間ですが、そこまで手を出すことで見えてくる木や材料、日本の林業や製材の現状。
家具を製作するという行為にもよい刺激を受けました。



今年は暖かくなり丸太もシーズンオフに入りました。
秋口に入り気温が下がり出したころ、また会津に出かけようと思います。


南会津への旅程での美しい景色。
宿の民宿では炉端で岩魚に舌鼓を打ちました。





追文


今回の福島への単騎行、材料以外にも色々と考えさせられる事がありました。

こんな事を言っては何ですが、東京では何となく東日本大震災は
もう他人事、済んだ事。という空気が流れている気がします。

しかし福島のローカルニュースで毎日流れる原発・放射能のニュース。
地元の人や宿の女将さんから聞く「フクシマ」への風評被害や県内での
差別意識の発生の話・・・。

東京やその近郊に暮らす自分たちは、何も終わっていないのに何を
終わったような顔をしているんだろう。と思いました。




さあ、遠慮せずに