2015年2月11日

デッドストック家具


目黒区のお客さまからのご注文で、40年以上前に製作されたと思われるオットマンを張り替えました。

張り替え前

最初拝見してお話を聞いたところ、ずいぶん大昔、買ったまま倉庫で眠っていたものが最近出てきた。とのこと。
中身に問題がなければ表地のみ張り替えてほしい。というお話でした。

仕事を引き受けたときは、使われていなかったのならばそのまま張り替えられるかな、と
思っていたのですが、布地をはがしたときその考えが甘かったことを認識しました。



確かにこの家具が使用されていた痕跡はなかったのですが、材料が古すぎて枯れ切っていたのです。

このままではいつまで耐えられるかは時間の問題だし、せっかく張り替えるのならば
中まできちっと手を入れましょう!という事で、綺麗だったワラ土手とバネはそのまま流用し、
あとはすべて入れ替えることにしました。

布をはがし、昔の職人さんの仕事を見ながら作業を進めたのですが、昔の仕事ってのは
キレイだな〜。と感心しっぱなしでした。
糸の絡げ方、釘の打ち方、バネの置き方等々、自分が親方に怒られながら覚えて行ったことが、そのまま教科書通り
目の前に拡がっていました。



ホントはワラ土手もないのですが・・・。
 張り替えは、まず麻テープ(力布)で受けを張り、

 バネを並べ、セル糸で力布に絡げた後、バネ糸で編んで行きます。


そして「受け」を張り、ワラ・ファイバーで下地を作り、下張りを張ってからウレタンクッションを載せ、
さらに「かぶせ」を張ったあと綿を載せて、下ごしらえは完成。

見ちがえった?

その後、表地を張り完成です。


現在よく使われる、ベニヤ板にウレタンを接着して下ごしらえお仕舞!という仕事に比べて、ばらバネ、ワラ土手の仕事は
下ごしらえの手間が何十、何百倍もかかる気がします。
見た目は同じでも、座り比べるとまったく異なる座り心地。
この椅子はどうしてこんな値段なんだろう。と思うとき、その中身にまで考えがおよぶと
家具の見方が面白くなってくる気がします。



PS. 
最近口の中に5分釘を入れて、マグネットハンマーで釘を打っていく作業が大好きなことに気がつきました。
できることなら一日中釘を打っていたい。。。

張り屋玄翁ともいう。

次回はこのマグネットハンマーのことを書きましょうか。




さあ、遠慮せずに