2015年1月29日

ソファーサイドテーブル・・・?




珍しい形の家具を製作しました。
先日B&Bのソファーを張り替えたお客さまからのご注文。

「ソファーに腰掛けたままでお酒を呑めるグラス置きがほしい」
「部屋に散らばりがちな雑誌、新聞、リモコンをまとめる場所がほしい」というオーダーでした。
オーソドックスなソファーサイドテーブルも考えたのですが、なにぶん巨大なソファーなもので
あまり部屋のスペースを取らない家具が欲しい。ということも条件のひとつでした。


スケッチを描いたり、試作品を作ったりいろいろ考えました。
その時、ふと、一般的にソファーの下はデッドスペースだ。という
ことに気がつき、そこに家具のベースを差し込めば邪魔にならない。と連想し、
さらに昔の国鉄の特急列車によくついていた、シートの肘に収納されている
折りたたみテーブルに考えが飛び、このような形になりました。



あまり作った事のない形なので、いちど試作品をお持ちして、使用していただ
きながら細かい仕様を煮詰めて行きました。
テーブルトップも最初は乗り物のテーブルいわく、グラス底に合わせて丸く掘り込んだのですが、最終的には全体を掘り込み。

お盆ですね。





納品も無事済んで安心しました。

今回の家具もその場所、その状況に合わせて製作する特注ものならではでした。
寸法や細部の仕様変更も可能です。
是非あなたのソファーにもいかがですか!(と、商売っ気を出してみる)




作り慣れない形のものを製作するときはいつも緊張しっぱなしですが、
それが無事納まったときはいつも体の力が抜けるほど安心します。









2015年1月4日

2015



新年は雪の一日で始まりました。
お正月の雪は縁起がいいと云います。

今年はどんな年になるのだろう。
みなさまにとっても良き一年となりますように。
本年もよろしくお願いいたします。




2014年12月28日

修理のしごと


町田の古着屋さんから店舗什器の修理を依頼されました。

Made in USAだけは判るのですが、製造年も何用の什器だったのかもまったく判らず。

お店の方が落としてしまい、ガラスは粉々に、本体もほぞが折れバラバラになってしまったものを
修理しました。



おそらく40年以上前に製作された什器と思いますが、構造も材料のナラもとにかく上等なものでした。
昔はこんなのが当たり前だったんだろなあ。ウチにも欲しいなあ。作ってみようかなあ。


今年ももうお仕舞。昨日お正月だったと思っていたらもう1年経ってしまった感じです。
このリニア以上のスピードはなんでしょうか。
2014年もありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
よいお年を!





2014年12月1日

葉山・加地邸


10月、11月の週末だけ公開されていた葉山の加地邸を見にいきました。
まずはアプローチ。正面からは建物の見えない細い路地。大谷石が見事です。

三井物産のロンドン支店長を勤めた加地利夫氏が、1928年に自分の別荘として葉山に建てたこの住居、
設計はフランク・ロイド・ライトの高弟、愛弟子と呼ばれた遠藤新。

そこを抜けると、

遠藤さんは人の動きを水の流れにたとえて建築の動線を考えていた方で、この加地邸の建物へのアプローチも
感動的、情緒的な設定がされていました。

建物に到達。

そのような考えは、建物の中でも徹底されていて、動線だけでなく、人の視線の動きまで考えられ
設計者の思惑どおり水のように建物の中を回遊した気がしました。


フランク・ロイド・ライトといえば、落水荘などが有名ですが、ライトも建物を設計するのに
水や火の要素を重要視したのは有名な話です。
一番弟子だった遠藤さんもそのことから様々なことを学んだのでしょうか。



ちなみに邸内は撮影禁止でしたが、家具や建具なども建物と統一されすばらしいものでした。


   現在お孫さんが所有されている、というこの建物、普段は公開されていませんが
これからどのように維持・活用していくか検討中、とのこと。     
   願わくは常時公開のような形で遠藤建築を開放してもらいたいものです。   



   









2014年11月23日

溶けかけたお菓子


建築家の方からの注文で、山形の旅館のキーホルダーを製作しました。


材料はウォールナット。
現在使用しているキーホルダーを交換するため、新規に製作することになりました。
大きさ 75mm × 75mm、だいたいの形は決定していたのですが、本体の厚みや面の取り方は協議をしながらの製作になりました。

最初は本体面をちいさく曲面取りし、比較的角張った雰囲気のものができあがったのですが
さらにお客さんに工房に来ていただき、実物を見ながらその場で機械加工をして形をチェックしていきます。

「もう少し面を大きく」「もうすこしなだらかに」「なかなか難しいねえ」

2人で意見を交えながら最終的な形を決定しました。


機械での加工はすぐに終わるのですが、ここからの仕上げが大変でした。
部屋番号の加工、サンドペーパーでの仕上げまでの研磨、オイル塗装の仕上げ・・・。

小物なので家具以上に手触りを意識して、仕上げを行いました。
結果自分で言うのも僭越ですが、「触って気持ちよく、なんだか撫でつづけてしまう」触り心地に仕上がったと思います。

建築家のお客さん共々、2人してキーホルダーを撫でまわしながら
「触り心地もいいし、形も色も溶けかけたチョコレートみたいだ。いいですね!」
満足していただいたようです。


触ってみたい方、サンプルが工房に置いてあります。見てたもそ。





すべて並べると木目が通っています。







2014年10月27日

ソファーと羽毛と驚きと


全長2,5mという巨大なソファーを張り替えました。


イタリアはB&Bというメーカーが10年程前に発売していたソファー、との事。
いまはもう絶版になり製造していないらしいのですが、愛着を持って使用しているので
張替えができないか、というご相談でした。

最初相談に工房へいらした時はお客さんのお持ちしたカタログを見て、軽自動車並みのその値段に驚き
実物を拝見したときはその大きさに驚きました。

なんとかご自宅のマンションから搬出を済ませ、工房で裂地をはがし始めたのですが
次はそのソファーのあまりにも高度に洗練された企画・技術に驚きました。
普通、このようなソファーを見た時、自分たちのような特注ものをつくっている人間は
木部の構造はどうなってんだろ、と思いますが、このソファーは木部がまったく無く、
硬質ゴムの細いフレームに後はすべて発泡ウレタンの固まりで出来ていたのです。

幸い発泡ウレタンはヘタリがなく、チップゴムをすこし補充してベースを作れたのですが
もしも発泡ウレタンがへたっていたら全く手の出しようがありませんでした。
このような構造のソファーは大メーカーが膨大な時間と人間、そしてお金をかけ企画をし、大掛かりな生産設備を
製造し、そこからオートメーション的にソファー生産をするものなのです。

ま、まさか、そんなものがこの農家の納屋跡 工房へ来るなんて。と思いながら布地のパターンの型を取り始めましたが
デザインもまた高度で複雑なものでした。
たとえば、背中が角度を変えながらねじれて座面につながり、その座面も傾斜の角度と座の大きさが変化している、というものです。


これはゼロから作れ、と云われても・・・。などと思いながら張替えを進めたのですが、
今回は普段あまり採用する事のない羽毛のクッションを使用してみました。
ふかふか。

コストはグンと上がりますが、ウレタンゴムのみのクッションよりも「バフッと」した座り心地になります。
そして羽毛の下は固めのウレタンクッションを入れ、体をしっかりと支えてくれるようにしました。

量産メーカーのソファー製作の仕方、普段あまり使うことのない材料へのアプローチなど
勉強になることが非常に多い仕事でした。
ただ、まだ学習していないことは、いまだに張り替え前のソファーの写真を撮り忘れ続けることでしょうか。




2014年10月11日

あれこれ考える



椅子をデザインしています。

世界には様々な椅子があり、私たちもそれらを参考にしたり反面教師にしたりもして椅子を考えます。

時代や国ごとにいろんなデザイナーがいますが、やはり椅子デザインで一番著名なのは
この人、ハンス・J・ウェグナー。



デンマーク出身のこの人、90年以上の生涯でデザインした椅子の数は500脚はくだらない、と云われています。
自分も椅子を考えるにあたり、彼の様々な椅子デザインを、文献を紐解くように図面を眺めたりしていました。

するとある時、ウェグナーの指向の変化という面白いことに気がつきました。

彼の若い頃の椅子というのは、もちろん実利面も考えてありますが、そのような事の他に
人の目を引くようなデザイン、華のある形の椅子が比較的多い事に気がつきました。

それがだんだんと後期、晩年に近づくにつれて「製造コスト」「座り心地」「耐久性」といった実用的な面が
より椅子デザインでのウェイトを占めていったような印象を受けたのです。
それはまるで面識のない、このデザイナーの生涯を伝記映画か何かでなぞっているような気がしました。

人が変われば椅子も変わる。
当たり前の話ですが、ウェグナーのような巨匠でもやはりそれは当てはまるのだ。
そしてそれぞれの時期のデザインを見て、ウェグナーがその時何を考えて図面を引いていたのか。
そんなことを考えながら彼のデザインした椅子を眺めてみるのも楽しいものだな。と思いました。







さあ、遠慮せずに